2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスとリトアニアにおける社会規範としての女性性形成の比較研究
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16K02050
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高馬 京子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (60757475)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 少女 / kawaii / フランス少女雑誌 / 規範として構築された少女像の日仏比較 / 未熟/成熟 / 少女マンガ / トランスナショナル / リトアニア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究一年目は、フランス、リトアニアにおける女性像がいかに形成されたのかの文献、及びフランス、リトアニアにおける女性誌における規範としての女性像に関する記事を収集した。そもそも、交付申請書にも記載した研究目的として、なぜフランス、リトアニアで「kawaii」などをキーワードとする「未熟な日本女性像」が形成され続けるのか、それらを自らのアイデンティティを形成するための「他者」として享受するフランス、リトアニアの現地メディアにおける女性像はいかなるものか知ることを研究テーマにしていたため、主に、kawaiiがどのようにフランスで表象されているか学会発表を行いながら、日本のkawaiiブームがフランスやその周辺国で話題になりはじめた2011年から2013年にかけて発刊されたそれらを享受する世代をモデル読者とする少女雑誌を中心にどのような少女像、女性像が読者が憧れる対象として描かれているかをJulie、Fan 2, Dream-up, Salut, Lolie, Petit Princesse(フランス)を中心に、表紙、また最初の編集ページに紹介される女性像がだれかを知るためその記事を収集しながら、調査対象の20世紀初頭の雑誌、リトアニアの雑誌などもプレ収集を行い1588頁の雑誌記事、関連文献のデジタルコピーを収集した収集した資料をベースになぜフランスで未熟とみなされる日本の少女マンガキャラクターが受容されるのかについての論文をまとめる中で、それらがいかにフランスで表象されたか、また、フランスの少女にメディアが課している規範としての少女像(大人っぽくセクシュアリティーを感じさせなければならないという少女像)が流布する中、日本の一見未熟とされている少女マンガキャラクターの内面の勇気に憧れているというアンケート結果と照らし合わせ新しい選択肢を提供するものとして第一段階として結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料を十分あつめることができ、第一段階としてフランス、リトアニアの規範的女性性と対峙するkawaiiという特徴のフランス受容の3つの学会発表、一部調査成果の出版(共著)もでき、順調に進展していると考えている。当初先に20世紀初頭のムスメ像が流布していたフランスメディアにおいて構築された規範的フランス女性像の記事を収集する予定であったが、21世紀の少女像に関する論文を書く機会があったこと、20世紀初頭のムスメ像に関する先行研究、資料収集に時間がかかるということからも、さらなる調査の必要性が生じたため、先に21世紀の少女像についての第一段階としての検討を行った。今後、日仏におけるカップル像の研究や、日本の女性誌における規範としての女性像と比較として考察しつつ、様々なジェンダー規範全体の中に女性、少女といった本研究テーマを位置づけるとどう考えられるかという視点もいれながら研究をすすめていくつもりである。また、研究に必要な備品なども購入し第一段階として研究に必要な設備を揃えることができた。収集した資料をさらに丁寧に分析、調査しながら、まだ調査していない時代の雑誌収集、分析、先行研究の調査を進める必要があるものの、ここまで順調に研究は進展しているものと考える。また、方法論としての言説分析に関するフランスの言説分析専門家ドミニックマングノーの翻訳書「コミュニケーションテクスト分析」の準備を行い、2017年秋には出版予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.昨年収集した先行研究の精読、また2010年代のリトアニアとフランスの少女雑誌における規範としての女性像に関する収集した記事に加え、1980年代から2000年前半までの対象記事を追加で収集しつつ分析をすすめその傾向を調査する。 2.同時に19世紀から20世紀初頭のフランス、リトアニアの雑誌における女性としての規範、少女像がどのように描かれていたか記事を収集し、分析を行う。具体的には、a)メディアにおけるジェンダー・アイデンティティ構築に関連する文献調査、b)19世紀後半から20世紀初めにかけて、フランスのメディアにおける女性性の形成資料収集分析を実施するが、調査メディアとしては、 La Mode illustree (1860-1937), Femina等19世紀から20世紀初めに女性雑誌)当時の青少年向け雑誌、小説タイトルの調査、及び女性性言及記事収集、Le Figaroなどに掲載された女性性関連記事、20世紀前後に読まれたフランスベストセラー小説における女性像の調査を行う。 3.リトアニアの成人及び青少年向け(女性)向けのメディアにおける女性性形成関連記事収集。調査対象メディア:BANGA(旧ソ連時代) 海外提携雑誌L’Officiel(2010-), Cosmopolitan(1998-)、リトアニア独自の雑誌、Ieva(1990-2013)、Laima(1993-), Panale(1994-),Edita(1999-)、及び20世紀初頭前後の女性誌を現地図書館で探し、調査を行う。 4.収集した結果を、分析したデータを自身及び、当該分野の先行研究と全体を照らし合わせ、総括として日本女性の未熟なイメージが形成される土壌としてのフランス及びリトアニア社会における規範としての女性性の形成を通史的、多角的に分析、考察を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として、193434円が昨年分から繰り越すことになったが、理由としてフランス関連の航空運賃、旅行運賃がテロなどの影響か、予想していたものより全体的に以前より低価格になっていたことが挙げられる。また調査で春にも赴きたかったが学務等でそれが叶わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、資料収集調査としてのフランス、リトアニアの滞在調査費、資料印刷費、図書費、3回国際学会発表を行う予定でその一部経費、英語の校閲、また、移動時に海外でも使えるタブレット機器、研究室で研究実行するために必要な設備(補助机)、また本テーマと関連研究の学会を開催するため、一部資金にあてたいと考える。
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