2018 Fiscal Year Research-status Report
フランスとリトアニアにおける社会規範としての女性性形成の比較研究
Project/Area Number |
16K02050
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高馬 京子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (60757475)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 規範的女性像 / フランス、リトアニア / 未熟・成熟 / ファッション雑誌、メディア / かわいい / グラマラス / 構築主義 / 言説分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、具体的な考察としてフランスのファッション雑誌のファッション特集において、そのシーズンの追うべきファッションとそれを身に着けることで体現する理想の女性像についてどのような形容詞、表現が使われているか、1970年代から2010年代までに出版された『ELLE』『VOGUE』(仏)を中心に考察した。『ELLE』の姉妹誌として1971年に刊行された日本の雑誌『anan』では時代によって様々な意味を含有しながら「かわいい」という言葉が使われていたのに対し『ELLE』では、GUNDLE(2010)が指摘するように、他の欧米ファッション雑誌と同様「グラマラス」という言葉が使用されていたことを検証する調査を行った。結果、同等の結果が見られたことにあわせ、「pretty」「fille(娘)」等かわいいと同様のある種幼さを喚起させる言葉もフランスの『ELLE』でも使用されていたことが明らかになった。日仏におけるファッション雑誌が提言する規範としての女性像を表す言葉が幼さ、未熟さを用いるとしても、その目的は異なると想定され最終年に向けて考察課題とする。この調査の結果報告を、“Normative Femininity of Japanese Women and “Kawaii” Constructed through Discourses of Japanese Fashion Magazine an an in Comparison with ELLE France”として、Asian Studies Association of Australiaで発表した(シドニー大)。また、日本のkawaiiが代表すると考えられている「未熟性」がいかに複数の行為者を通して世界へ広がっていったかについても、Transboundary Fashion seminar (文化学園大)において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランス、リトアニアとも分析するための雑誌関連記事をデジタルデータとして、及び関連先行研究に関する資料も収集し、考察をすすめている。また、それらをより理解するための日本の事例の考察についても同僚とともに、Tanaka, Hiromi, and Koma, Kyoko, 2018, Lecture, “Gender Representation and the Portrayals of Women in Japanese Media: A Changing Pattern,” Department of Sociology( National Taipei University)という形で行い比較することで、より本研究課題であるフランスの現状をみることができた。また、分析方法としての言説分析に関する理論書『コミュニケーションテクスト分析』(ひつじ書房)の共訳も刊行できた。また、夏と冬の海外調査では、仏、リトアニアにおけるファッション雑誌該当記事の資料収集、比較対象としての近隣アジアの一つ香港のファッション雑誌の資料収集を行った。また、論文投稿として Discourses of Several Actors on Globalizing Non-Western Kawaii Fashion in the 21th century, “Construction of kawaii as an Idealized Femininity in the Context of Fashion in Modern Urban Japan”、また出版されたものとして「越境するGEISHA」松本健太郎・高馬京子編『越境する文化、コンテンツ、想像力』,ナカニシヤ出版. がある。リトアニアの雑誌分析、フランスのまだ実施していない雑誌分析については最終年で調査を行いたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題最終年となる今年は、集めた雑誌記事の考察し、論文にまとめることが大きな課題となる。主として、①フランスメディアにおける規範的女性性の構築ー Femina のファッション記事における日仏女性像を中心に(1901ー1907)ー②リトアニアの女性雑誌における規範的女性像における考察、そして③フランスのELLEにおけるファッション記事を通してみる規範的女性像についての補足考察をまとめることが課題となる。これらをまとめ、本研究課題であるリトアニア、フランスのメディアにおける規範としての女性像について、日本の「未熟」とされる女性像との比較において、いかに形成されているのかについて調査全体像からの考察を試みる。また、本研究課題の次のステップとしての今後の可能性として、以下2点の考察を本研究課題と関連して研究できるかについても検討する。一つ目は現在インターネット、SNSの発達に伴い、デジタルメディア上でファッション情報も様々に構築、拡散され、それらを通して実現が提言される規範的女性像が様々な行為者ー発信者や受信者、フォロワーによって複合的に構築されているだろう現状についての考察である。この点に関して、今後の研究課題とするために、まずはその調査の可能性についてすでに紙媒体では考察をすすめている日仏の『ELLE』の様々なオンラインメディア版の短期間の資料体をサンプルとして検討を行い、次回の研究課題の可能性と現在の研究課題とがいかに連動していくかを明らかにできるかの可能性を探る。また、2点目として、これも今後の研究課題の一つとして、フランス、リトアニアの男性誌における規範としての女性像を考察することで、男性誌、女性誌における規範としての規範としての女性像との共通点、相違点を考察することで、フランス、リトアニア、そして日本における規範としての女性像について検討する予定である。
|