2016 Fiscal Year Research-status Report
東ドイツ社会国家にみるセクシュアリティと政治の関係性
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16K02051
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
水戸部 由枝 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (20398902)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 東ドイツ / セクシュアリティ / 性病 / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
1)サブテーマ①「ソ連占領地域での性病問題への対応と性規範の形成」では、占領期および50年代前半の性病蔓延防止対策に関する史料収集を、主にベルリン連邦公文書館、ベルリン州立公文書館、ベルリン国立図書館で行った。
2)サブテーマ②「東ドイツにみるセクシュアリティの管理・監視体制からの解放」 無宗教者が多くカトリック教徒が極端に少ない東ドイツでは、「性の解放」は西ドイツ以上に社会国家の支柱である近代家族形態を揺るがし、国家崩壊へと導く重要なファクターになったという推論のもと、占領期からドイツ再統一までの東ドイツにみるライフコースの変容、公権力側と国民の間での家族観・性道徳観の相違、産児制限と性教育の状況とそれらに関する政策の推移、性に関する法律改正とその理由を明らかにすることを目的に、史料・文献収集および社会調査を行った。 社会調査については、60年代半ばからのセクシュアリティの解放(婚前婚外性交、産児制限の広がり)、ライフコースの変化と非標準的家族の広がり(婚姻率・出生率の低下、離婚率の上昇・婚外子数の増加)に関する当時の人たちの見解をより鮮明にするため、在外研究中の所属機関であるドレスデン工科大学の同僚3人の協力のもと、ドレスデン近郊に住む55-85歳の男女を対象に、150件のアンケート調査(回答数約120件)および4人にインタビュー調査を行った。アンケート内容は、結婚・離婚、性行動・性意識、性規範・性教育、性の商品化等に関するもので、本アンケートは概要を含み総頁数10頁、65項目の質問により構成される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の採択は2017年10月と、通常より半年遅れての追加採択であったため、計画通りに作業を進めることができなかった。とはいえ社会調査(アンケート・インタビュー)については、予定通りほぼ終わらせることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)サブテーマ①「ソ連占領地域での性病問題への対応と性規範の形成」に関する史料をシュタージ公文書館、ドレスデン衛生博物館図書館等で収集する。ソ連占領軍、ドイツ中央行政管理局、専門家集団は、レイプとその結果生じた妊娠・出産、また売買春をどのように問題化し、その解決のためにどういった政策や制度を考案し、実施したのか。ソ連占領地域および後の東ドイツ政府はなぜ、またどのように、妊娠中絶、ソ連占領軍とドイツ人女性の関係(レイプ被害者、慰安婦、恋人)の問題を全面的に性病感染の問題へとシフトさせていったのか。これらについて明らかにするため、事例として、ソ連占領当局により、性病および衛生面での啓蒙・教育活動を命じられたドレスデン衛生博物館の活動について調査する。
2)サブテーマ②「東ドイツにみるセクシュアリティの管理・監視体制からの解放」では、独裁体制とはいえ、セクシュアリティの管理・監視体制には限界があり、そうしたなか、特に若者の政権への支持を確保するには、国家は法律と性規範の面での妥協と並行して家族政策の充実化を図る必要があったこと、その結果「性の解放」は進み、後者は財政圧迫に拍車をかけたという仮説について検証する。その際、前年度実施した社会調査の分析結果、史料・文献をもとに研究を進める。
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Causes of Carryover |
研究費の使用開始が2016年10月以降であったことから、①ノート型パソコンおよびデジタルカメラの購入、②独文校閲費、「社会国家」専門的知識の教授・指導謝金、③外国旅費の一部の使用を2017年度へと持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①ノート型パソコンおよびデジタルカメラの購入、②独文校閲費、「社会国家」専門的知識の教授・指導謝金、③外国旅費、④インタビューおよびアンケートに関する知識の教授・指導謝金にて使用する予定。
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