2018 Fiscal Year Research-status Report
東ドイツ社会国家にみるセクシュアリティと政治の関係性
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16K02051
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
水戸部 由枝 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (20398902)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 東ドイツ / セクシュアリティ / 産児制限 / 性教育 / 性病 / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
サブテーマ①「ソ連占領地域での性病問題への対応と性規範の形成」では、昨年度に引き続き、占領期および1950年代前半の性病蔓延防止対策および性暴力に関する史料収集を、ベルリン連邦公文書館、ベルリン国立図書館、ドレスデン州立中央文書館、ドレスデン州立図書館で行った。その成果の一部を第50回「ドイツ社会国家研究会」(2019年3月18日,慶応義塾大学)にて、「戦後復興期にみる“占領軍兵士とドイツ人女性”の国家管理:性病対策と性規範の形成を中心に(仮題)」というタイトルのもと報告した。
サブテーマ②「東ドイツにみるセクシュアリティの管理・監視体制からの解放」では、ドレスデン州立図書館、ベルリン国立図書館等で史料・文献収集を行いながら、昨年に引き続き、占領期からドイツ再統一までの東ドイツ時代のライフコースの変容、公権力側と国民の間での家族観・性道徳観の相違、産児制限と性教育の状況とそれらに関する政策や制度の推移、性に関する法律改正とその理由について明らかにした。その際、東ドイツの状況について明確化するために東西ドイツ比較を行った。さらに2016年度に150人を対象にドレスデンで実施したアンケート調査(回答数120件)の結果をまとめた。これらの内容の一部について、2018年8月24日にドイツ・ドレスデン衛生博物館(Deutsches Hygiene-Museum Dresden)にて、「Repräsentativ-Umfrage: Sexualität in der ehemaligen DDR(代表調査:旧東ドイツのセクシュアリティ)」というタイトルで研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①本研究が2016年度10月に開始したため ②2017年度に体調を崩したため ③別の研究テーマ「ドイツ・ヴィルヘルム期のセクシュアリティと政治の関係性」に研究時間を要したため
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Strategy for Future Research Activity |
サブテーマ①「ソ連占領地域での性病問題への対応と性規範の形成」に関する史資料調査をベルリン、ドレスデン、ハイデルベルクで行う。その目的は①ソ連占領軍、ドイツ中央行政管理局、専門家集団は、ソ連占領軍兵士による性暴力と妊娠中絶の問題をどのように解決したのか、②占領期に形成された性規範と東ドイツ国家における家族観や性道徳観との間の連続性・断絶性、③これらの内容と旧西ドイツのケースとの共通点・相違点、について考察することにある。2020年3月までに論文「戦後復興期にみる“占領軍兵士とドイツ人女性”の国家管理:性病対策と性規範の形成を中心に(仮題)」にまとめ、辻英史・北村陽子編『ドイツ社会国家の歴史:閉ざされざる環』(日本経済評論社)に寄稿する。
サブテーマ②「東ドイツにみるセクシュアリティの管理・監視体制からの解放」では、本研究内容をまとめた拙稿「Vergleichende Betrachtungen zu Familie, Ehe und Sexualität zwischen der BRD und der DDR in den 60er und 70er Jahren, einschließlich einer Fragebogen-Pilotstudie mit DDR-Zeitzeugen(1960/70年代の家族・結婚・セクシュアリティに関する旧東西ドイツ比較:旧東ドイツ人へのアンケート調査結果をふまえて)」を、2019年度内にドイツの雑誌に投稿する。 また2019年度より「1960-70年代、東西ドイツにみる産児制限の広がり:プロ・ファミリア(西)のH.ハルムゼンと家族・結婚・性相談所(東)のK.H.メーランの議論を例に」をテーマに、石井香江氏(同志社大学)代表の研究プロジェクト「日本とドイツのケア労働と男性性の変容をめぐる学際的共同研究」に参加している。
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Causes of Carryover |
理由:1)ノート型パソコンおよびデジタルカメラの購入、2) 独文校閲費、「社会国家」専門的知識の教授・指導謝金、3)外国旅費の一部使用を2019年度へと持ち越したため。
使用計画:1)ノート型パソコンとデジタルカメラの購入、2)「社会国家」およびインタビュー・アンケート調査に関する専門的知識の教授・指導謝金、独文校閲費、3)外国旅費にて使用予定である。3)については、すでに8月13日~9月1日のドイツでの調査に向けて準備を進めている。
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