2016 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本における人形の創作およびその受容に関する研究
Project/Area Number |
16K02058
|
Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
吉良 智子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (40450796)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 人形 / ジェンダー / 近現代 / 日本 / 受容 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代化の過程において「人形」が「女児文化」に位置づけられ、「女性にふさわしいもの」とみなされた歴史に着目し、ジェンダー論および身体論を援用しながら、現代における「人形」の創造とその受容の様相を解明するため、本年度は、研究の基礎的資料の収集と分析をしつつ、「受容」に着目し考察を進めた。 特に、近代から現代にかけて日本の少女たちに受容された人形とその身体性に焦点をあてた。 今日、人形は女児に属する玩具とされているが、そのような概念は日本の近代化(ジェンダー化)によってもたらされた。「ままごと」などを通じて女児用人形は「良妻賢母教育」に使われてきた。女児たちが主に使用した人形は、「乳幼児的身体」でもって表わされ「妊娠」に結びつくような身体ではなかった。戦後、ソフトビニールやプラスチックなどの新素材を使用し、工場で大量生産された人形が開発された。特にティーンエイジャーを対象としたファッションドール(バービー人形、リカちゃん人形など)はセクシーな身体で作られた。成熟した女性身体をもつファッションドールは、「妊娠」可能な身体を所有しているともいえる。それらのファッションドールからは「妊娠」した人形も発売された。「マタニティドール」のさきがけである「マミー人形」(ハスブロ社製)、続く「ティーン・プリグナンシー・バービー」(マテル社製)、「妊娠した」日本のリカちゃん人形(タカラ製)などを取り上げながら、これらの「マタニティドール」に対する社会的評価を分析し、あるべき「女児用人形」とは何かを考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度は初年度にあたり、文献の調査や講読に集中する予定であったが、他の研究者とともにシンポジウムを催すなど、中間報告的な研究発表の場も設けることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
「人形」にかかわる概念、教育、団体展、展覧会などの制度に関する考察を行なう。特に人形の近代「美術」からの排除/参入による「美術」の再編成に留意しながら、人形職人/人形作家の分離、アーティストとしての近代的人形作家養成制度の構築、人形制作教育におけるカリキュラムの実態、団体展および展覧会の開催状況、一般女性向けの人形創作講座についての考察などを行なう。女性の創作物が経済システムの中で不可視化・無価値化・低廉化されてきた可能性を探る。 次に、ケーススタディとしての女性の作り手に関する考察を行なう。従来の評価や著名度にかかわらず、各時代を特徴づける活動を行ない、作品を残した女性の作り手(堀柳女[1897-1984]、野口園生[1907-1996]、高浜かの子[1911-1992]、天野可淡、恋月姫など)の作品画像資料や関連資料の分析を行ない、女性の私的・公的空間における創作活動が、認知・評価に到るまでのプロセスを明らかにする。また作り手としての女性は人形の身体と自らの身体の関係をどのように意識し、あるいは無意識のうちに制作をしてきたのかを考察する。
|
Causes of Carryover |
文献講読や研究発表の準備、当該研究以外のテーマによるシンポジウムへの招待発表の登壇準備などにより、当初予定していたよりも文献購入や調査が少なかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、未入手の文献購入や調査に当て、計画的な執行を予定している。
|
Research Products
(1 results)