2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02062
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
李 恩子 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50580586)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 思想・運動・歴史 / ミクロネシア / ジェンダー / 帝国レガシー / 旧委任統治領 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年、初年度の研究成果は二回に亘るフィールドリサーチを行うことができた。パラオ共和国と北マリアナ諸島共和国のサイパンである。 日本の旧委任統治領であった二か所の現地を調査することで、日本の影響とレガシーについて類似点があることは予想していたが、多くの側面で差異があることがわかった。レガシーのみではなく、現在の日本との関係と関与について、そして、現地の人びとの日本に対する「アイデンティティー」に関しても類似点と差異を見ることができた。また、萌芽研究での調査地域であったミクロネシア連邦とのさまざまな側面での違いも文献では見過ごしてしまいうる事柄などを把握できた。このことは、今後の研究に大きな意味をもたらすと思っている。 戦前の日本の委任統治、そして、戦後のアメリカによる信託統治を経て、現在のアメリカとの政治上の関係(コモンウエールズ、自由盟約)の現状についても考察することができた。加えて、アジア太平洋諸国間におけるこの地域の国際政治上の位置がそれぞれ違うという現状の把握は、本研究の核の一つである女性の生と性に及ぼしている影響の差異を各地域の文化的、歴史的コンテキストで検証する必要性が求められるべきという確認を得た。最後に米国ニューヨーク、ボストンでの資料収集が現在整理中であるが今後の継続研究に必要な文献を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の旧委任統治領であった二か所の現地調査を行うことができ、当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度のフィールドリサーチは旧委任統治の構成領土の一つであった現在のマーシャル諸島共和国を予定している。周知の通りマーシャル諸島共和国は水爆実験のあったビキニ島の住民とりわけ妊産婦への被害が大きく、その後遺症に苦しめられている人びとが多くいる。そこでの現地調査を踏まえ「帝国の支配」がどのように女性たちの保健医療を含む生と性にどのような影響を及ぼしているのかを調査する予定である。また2017年度春学期において本学国際学部に招いた米国コロンビア大学のGary Okihiro教授を囲んでIsland Studies の理論的枠組み、そして、この領域における現在の研究現況などの研究会を数回開催する。
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Causes of Carryover |
研究関連書籍を所属大学の他研究費から支出したため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度のフィールドリサーチ調査において現地研究協力者への謝金にあて、当初の計画以上の情報収集等を行う。
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