2017 Fiscal Year Research-status Report
中世の紀伊半島における歴史遺跡・名所の創作および保存・活用事業データベースの作成
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16K02069
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
海津 一朗 和歌山大学, 教育学部, 教授 (20221864)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 徳政 / 神領興行 / 弘法大師御手印縁起 / 倭寇 / 紀州惣国 / 寧波 / 神風 / 神戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
1中間報告書の刊行 紀伊半島から考える世界史研究会を組織して2年間におよぶ共同研究成果を『世界史とつながる日本史ー紀伊半島からの視座』として刊行した。なるべく全国的な影響力・広報力を高めるために、学術出版のミネルヴァ書房を版元とした(2018年4月30日刊行 ISBNー9784623082407)。この書籍は、紀伊半島が世界と日本をつなぐ窓口として存在していることを、主に実体の側面から解明している。本科研費の研究は、遺跡や史実を活用・捏造した情報戦略の側面を考えるものであり、紀伊半島だけが世界の窓口として注目される仕掛けを解明するものである。遺跡の捏造に関する前近代の部分(1・2・3部)が私の責任編集部である。研究書の早期刊行によって、世界につながる史実が確定、それをめぐる捏造粉飾の在り方をさぐる必要、ということで研究の主眼が大きく絞られてきた。 2中国調査 関係遺跡の調査と、上記研究成果の広報のために各地の歴史教育関係学会に出席して意見交換してきたが、中国寧波の調査は前近代の紀州の位置付けを明らかにするものであった。紀伊半島には倭寇勢力と連携した宗教共和国「惣国」が16世紀まで存続するが、寧波の双嶼半島がその本拠地であり、重源・覚心・徐福らの紀州関係者の足跡を追うことができた(調査団の山川均会長に多くの指南を得た)。中国杭州沿海との文物の交流に加えて、様々な宗教的伝承を担った紀伊半島の寺社勢力の役割がクローズアップされてきた。四国の瀬戸内地区などの対外交流関係史跡についても追加調査をおこなって、紀州との比較を行なった。 3捏造遺物の事例として空海の御手印縁起について個別調査を実施して原物の確認に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究公開の面では一般研究書が刊行できて進捗した分、注目される事例への注意が集中したので、全県的なデータ蒐集の作業に遅れがでてしまった。研究公開を急いだ理由は、高校「歴史総合」等の学習指導要領が公表されて、本研究の成果との接点が予想以上に大きいことによる社会的な責任の優先のためである。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では当初の計画通りに、捏造された遺跡のリスト(主体勢力と時期)を作成する作業を実施したい。ミネルヴァの刊行書により、前近代の紀伊半島では、重源・無本覚心・明恵・西大寺派による遺跡由緒作りに加えて、33所回国聖や倭寇勢力の影響が大きいこともわかっている。それらの遺跡創造の「核の部分」と、従属勢力の活動を拾い出したい。 高野山の空海聖宝については、後醍醐天皇と側近文観(律宗僧)による寺領興行の過程が明らかにできるので、紀州惣国連合の魁として特別の注目をしたい。
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Causes of Carryover |
中間報告書の作成作業を進めたために、データ収集の作業がおくれて経費が使用できなかったため。 使用計画としては、データベース作成のための調査出張および専門的知識の教授、関係報告書の収集に重点的に使用したい。
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Research Products
(4 results)