2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02086
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西村 正雄 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30298103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化遺産 / ラオス / フィリピン / リビング・ヘリテージ / 有形遺産 / 無形遺産 / 世界遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1年目にあたるため、ラオス及びフィリピンの関係機関におもむき、本研究の目的、意義、協力体制の必要性についてまず説明した。フィリピンには5月22日-29日に行き、マニラの国立博物館、アテネデマニラ大学、デルラサール大学で研究の説明を行った。さらにセブのサンカルロス大学、セブ市のラモン・アボイティス・ファウンデーションにて、説明を行い、協力を要請した。さらに、9月2日より12日まで、セブ市において、フィールド調査を実施した。調査は、セブ市のダウンタウンのティナゴ、パリアン地区の古くから住む住民に、遺産の概念と、家族の記憶についての調査を実施した。 一方、ラオスへは10月29日-11月5日までヴィエンチャンとチャンパサックにおもむき、ヴィエンチャンの情報文化観光省、チャンパサックのワット・プー・ミュージアムにて本研究プロジェクトの目的、意義、協力態勢の必要性についての説明を行った。チャンパサックでは、世界遺産関連の村、ノンヴィエン、ノンサにおいて住民に遺産の認識と、家族に伝わる遺産と記憶についての調査を行った。この研究協力体制は、今後プロジェクト終了まで継続させる。 今回の研究の仮説となる部分については、前回の科学研究費による成果と、その後の調査で立てている。その仮説の妥当性を検証するため、国際学会での発表を試み、そこで他の研究者の意見を聞くこととした。このため、7月8日より10日までタイのバンコックのタマサート大学で開催された、第5回国際ラオス学会に参加し、研究発表を行った。また、2016年度締めくくりとして、2017年3月30日と31日に早稲田大学文学学術院にてハワイ、ラオス、フィリピンの研究者と招き、一般の聴衆も交えて、国際ワークショップを開催して、研究の妥当性の検証を行った。いずれの国際会議でも、方向性の妥当性が確認されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であるため、研究目的、意義、方法を日本、フィリピン、ラオスの研究協力者と共有することが重要であった。この点、説明をつくし、充分に達成されたと考える。また、調査の前提となる研究仮説について、国際学会で発表し、他の研究者と積極的に意見を交換した。その点で、批判もあったが、本研究の方向性について、その妥当性が検証できた。こうした点から第1年目として順調に進行していると判断した。 ただ、第1年目に、フィリピンでモスリムのコミュニティにおけるフィールド調査、もしくはフィールド調査の準備に入る予定であったが、現地の政治的、社会的事情により、達成できなかった。これは第2年度に残した課題となった。 ラオスにおいては、世界遺産内に暮らす人々の遺産意識について、質的研究の情報が収集できた。リビングヘリテージについて、新しい知見を得ることができた。また、アンケートによる量的研究のデータの収集の準備もできた。今後、それらを使って、詳細な分析を行ってゆく。また、2年目に向けてさらなるフィールド調査を進めてゆく。ただラオスのおいても、課題はある。すなわち世界遺産外の人々、とくに低地部ラオの人々以外の人々の調査について、まだ資料の収集ができておらず、第2年目の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年目に構築した研究協力態勢(チーム)を維持しながら、フィリピン、ラオスにおいて研究調査を続けてゆく。第2年目以降は、研究を精緻にするため、次の方策を立てている。 1.フィリピン:遺産の概念がキリスト教徒の暮らすセブ市で行ってきたことと比較するため、セブ市もしくは、セブ市近隣のモスリム教徒の暮らす地区での遺産の考え方、また感じ方、そして遺産にまつわる記憶について、調査を行う必要がある。その結果を、第1年目の研究結果と比較対照する必要がある。そのためには、モスリム教徒の暮らす地域への接近をはかり、自由にインタヴューができる環境整備を行うため、研究協力者に新たに数名、モスリム教徒の人々を加える。これが第2年目のフィリピンでの調査の課題となっている。 2.ラオス:引き続き、第1年目の研究協力のチームで調査を遂行する。第2年目に特に目標としているのは、世界遺産の範囲外の人々の遺産に対する考え、感じ方、そして記憶の問題を調査を通して明らかにし、それを第1年目の調査結果と比較対照することである。第2年目では、この遺産外の調査する人々に、低地部ラオの人びとはもとより、少数民族の人々へのインタビュー調査も考えている。そこで得られた資料を分析して、第1年目の調査結果と比較してみることを目標としたい。 第2年目においても、調査と分析を同時に進行させながら、研究を進めてゆく。また調査の中間報告の形で、学会で発表し、他の研究者との意見交換を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
国際ワークショップを開催した際、フィリピンからジョセリン・ヘラ氏を招聘した。しかし来日直前に氏が自身のパスポート取得の都合上、来日をキャンセルし、代わりに急遽、インターネット会議システムを使用しての参加となった。このため、氏に支払う航空運賃、ホテル代がキャンセルとなり、そのため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた差額分は、2017年度の研究調査費、特にフィリピンへの海外渡航費、及び調査費の中に組み入れたい。
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Research Products
(13 results)