2018 Fiscal Year Research-status Report
観光資源を活用したパーキンソン病の人のリハビリテーションへの応用
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16K02093
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
赤松 智子 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80283662)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光資源 / 観光地環境 / ユニバーサルツーリズム / 行動学 / パーキンソン病 / 社会的リハビリテーション / QOL / エンパワメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、パーキンソン病(Parkinson's disease;以下PD)の人の心身の健康や生活の質の維持向上を目指して、観光資源をリハビリテーションの手段として利用することの有効性について科学的根拠を提示することである。 研究期間の3年目となる平成30年度は、先行研究である「観光資源を利用したパーキンソン病の人のリハビリテーション効果についての研究」成果から得た京都の観光資源に関するデーターを基に、観光地の物理的環境における特徴からPDの人の社会的リハビリテーションとしての観光資源の活用と有効性について検討した。また、新たに調査も行った。以下に、事例を提示する。 京都水族館は、2012年3月に開業したユニバーサルデザインを取り入れた施設であり、なおかつ、水族館として京都市で初めての施設であることから、PDの人は関心を持ち複数の人が訪問を希望した。水族館内の休憩場所が限られているため、PDの人の当日の体調に応じた見学コースの考慮を必要とした。また、下りスロープが続く経路では、突進歩行が誘発されるPDの人の場合には、ご本人に付添い、声掛けして転倒予防に配慮した。 大河内山荘の路面は、入口より舗装された急斜面の上り坂道で、上がりきった先は平坦な砂利敷きが続き、御抹茶席や大河内傳次郎記念館がある。その先の経路は標高が上がり、高低差の大きい複数の石段や飛石が連続しており、整備された庭園や京都市内や嵐峡が展望できる。路面に複数含まれる石段や飛石、階段は、身体が不自由な人にとってはバリアになるところであるが、PDの人の場合には、視覚刺激として有効に働き歩行を容易にしていた。広い敷地に点在する屋根つき休憩所などに腰掛けて、自然や景色を楽しんでいた。洋式トイレには、手すりがないため、平衡障害がある人の場合は、事前の声掛けが必要であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに調査した京都の観光資源に関するデーターを基に、観光地の物理的環境における特徴からPDの人の社会的リハビリテーションとしての観光資源の活用と有効性について検討した。また、自然災害の影響を大規模に受けた観光地が複数あったことから、再調査及び、新しい施設について調査をおこなった。 さらに、京都の観光資源に関する情報内容を、ユニバーサルツーリズムとして、広く一般の人に利用できる資料として作成し、公開できるよう手続きを進めている。 また、当初の研究計画では、観光資源活用によるリハビリテーションが、PDの人の脳機能にどのような影響を与えているか否かを確認するため、f-MRIを用いたPDの人の生体内(脳機能)変化の測定方法の検討および試行をしていたが、難しいことが判明した。実際の観光地でのf-MRI測定は不可能であることから、検査室内で、疑似体験として実施測定を考慮したが、PDの人の場合、どのような映像においても視覚刺激に対して反応性が高くなることから、観光資源に特化した現象を確認することができなかった。 以上のことから、当初の計画以上に進展している状況ではないことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、以下の3項目を予定している。 1.これまでに調査してきた京都の観光資源に関する情報内容を、ユニバーサルツーリズムとして広く一般の人に利用できる資料を作成し、冊子体もしくはウェブサイト公開にむけての作業を引続きおこなう。 2.パーキンソン病の人のリハビリテーションの手段としての観光資源の活用のみならず、社会的リハビリテーションの観点から、PDの人以外に、他の疾患や高齢者などの多くの人が有効に利用できる方法について検討する。 3.本研究をさらに発展させるため、国内外でおこなわれている観光資源の利用に関する事例の情報収集と視察をおこなう。
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Causes of Carryover |
本研究実施計画の初年度には、生体機能の変化を測定するための備品として自律神経活動測定器(YKC社製 TAS9VIEW;単価739800円)の購入を予定していたが、研究遂行上、適切ではないと判断し購入にいたらなかったことから、未使用金が生じた。 これまでに調査した京都の観光資源に関する内容を公開するため、作業を進めてきたが、大規模な自然災害により観光地に影響があったため、再調査の必要性が生じている。そのため、現在も、ユニバーサルツーリズムとして広く一般の人が利用できる資料を作成している。それらの資料を用いた冊子体もしくはウェブサイトの作成を予定しており、その費用にあたる未使用金が生じた。 使用計画は、冊子体もしくはウェブサイト作成費:一般の人がユニバーサルツーリズムとして利用できる資料として冊子体あるいはウェブサイトを作成するための費用が必要となる。物品費:観光資源を活用した社会的リハビリテーションプログラム内容を検討するため、国内外の資料や文献、関連図書を購入する。旅費:京都市内および市外在住の被験者宅を訪問し、調査を行なうための交通費が必要となる。また、京都市内外の観光資源の再調査をおこなうための交通費が必要となる。研究成果を発表するための交通費が必要となる。人件費・謝金:被験者に対して謝金を支払う。研究協力者による観光地の再調査や公開用資料の作成のための謝金を支払う。
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Remarks |
赤松智子、観光資源を活用したリハビリテーション、平成30年度 佛教大学研究活動ポスターセッション、2018年11月4日~12月8日、佛教大学(京都市)
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