2019 Fiscal Year Research-status Report
観光資源を活用したパーキンソン病の人のリハビリテーションへの応用
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16K02093
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
赤松 智子 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80283662)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光資源 / ユニバーサルデザイン / リハビリテーション / QOL / パーキンソン病 / ウェルネスツーリズム / 行動学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、パーキンソン病(Parkinson's disease;以下PD)の人の心身の健康や生活の質(Quality of life;以下QOL)の維持向上を目指して、観光資源をリハビリテーションの手段として利用することの有効性について科学的根拠を提示することである。 研究期間の4年目となる令和元年度は、先行研究である「観光資源を利用したパーキンソン病の人のリハビリテーション効果についての研究」成果より蓄積してきた京都の観光資源に関するデーターを基に、観光地の物理的環境を利用したリハビリテーションが、PDの人のQOLに与える影響について解析した。PDの人のQOLを構成する要素には、8項目:可動性、日常生活活動、情緒、羞恥心、社会的支え、認知、コミュニケーション、身体的愁訴が含まれる。それぞれのスコアは、観光資源を利用したリハビリテーション実施後には改善しており(p<0.05)、その3ヶ月後には、抑うつ気分やPD由来のストレスが軽減していた。聞き取り調査では、外出頻度や家族との会話が増加したと複数の人が回答し、病気や薬について医師と積極的に相談するようになった人もいた。さらに、泊りがけの旅行計画実現のため、ウォーキングを始めるといった生活習慣に変化がみられた人もいた。 また、観光地の物理的環境についての継続的な調査から、複数の知見を得た。世界遺産であるお寺の境内や石段にスロープや手すりが設置されていた。日本の神社仏閣のトイレは、文化財保護の観点から改修工事が容易にできない状況であるが、和式様式から洋式化の工事の際に空間を確保し、手すりやオストメイト対応といった多機能トイレへとユニバーサルデザインを取り入れられていた。観光資源は、リハビリテーションとしての利用のみならず、ウエルネスツーリズムとして、子どもから高齢者、外国人など広く有効利用できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに蓄積してきた京都の観光資源に関するデーターを基に、観光地の物理的環境を利用したリハビリテーションが、PDの人のQOLに与える影響について解析した。 また、各施設の物理的環境の継続調査から、ユニバーサルデザインを既に取り入れている施設があることがわかった。さらに、ユニバーサルデザイン化の工事をおこなっている施設や地域も複数箇所において確認した。 世界遺産や文化財保護を継続しながらも、人にやさしい環境づくりを積極的におこなっていることから、これまで調査してきた観光資源に関する情報をリハビリテーションとしての利用に追加して、ウエルネスツーリズムとして広く一般の人に利用できる資料作成と公開のための準備を進めた。 観光資源を所有する各々の施設や地域に対して協力を依頼し、了承が得られた施設より再調査を行なった。進めていく中で、数年前の自然災害の影響を大規模に受けた施設があり、協力が延期となる場合もあった。さらに、新型コロナの影響を受け、調査実施が中断となった。 以上のことから、当初の計画以上に進展している状況ではないため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、以下の3項目を予定している。 1.これまで調査してきた京都の観光資源に関する内容を、ウエルネスツーリズムとして広く一般の人に利用できる情報としてユニバーサルデザイン化した資料を作成し、ウェブサイト公開もしくは冊子体作成にむけて引き続き作業をおこなう。 2.パーキンソン病の人のリハビリテーションの手段としての観光資源の活用のみならず、社会的リハビリテーションおよびウエルネスツーリズムの観点から、PDの人以外にも他の多くの人が有効に利用できる方法について検討する。 3.本研究をさらに発展させるため、国内外でおこなわれている観光資源の利用に関する情報収集と視察をおこなう。
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Causes of Carryover |
本研究実施計画の初年度には、生体機能の変化を測定するための備品として自律神経活動測定器(YKC社製 TAS9VIEW;単価739800円)の購入を予定していたが、研究遂行上、適切ではないと判断し購入にいたらなかったことから、未使用金が生じた。これまでに調査してきた京都の観光資源に関する内容を公開するため、作業を進めてきたが、大規模な自然災害により観光地に影響があったため、再調査の必要性が生じた。さらに、新型コロナの影響を受けて実施が一時中断となり、作業が長期化している。 以上のことから、現在も、ウエルネスツーリズムとして一般の人に利用できる資料の更新および作成中であり、その資料を公開するためのウェブサイトもしくは冊子体作成を予定しており、その費用にあたる未使用金が生じた。 (使用計画)ウェブサイトもしくは冊子体作成費:京都の観光資源に関する情報を、ウエルネスツーリズムとして一般の人に利用できる資料として公開するための費用が必要となる。物品費:観光資源に関連した国内外の資料や文献、関連図書を購入する。旅費:被験者の調査と京都市内外の観光資源について再調査のための交通費が必要となる。研究成果を発表するための交通費が必要となる。人件費・謝金:被験者と研究協力者に対して謝金を支払う。観光資源について公開できる図面資料作成のための謝金を支払う。
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Remarks |
佛教大学「研究活動報manako」に、研究内容の報告をおこなった。
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