2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02097
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 洋子 久留米工業大学, 工学部, 教授 (30290828)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 置き屋根土蔵 / 伝統家屋の利活用 / 農家民宿 / 南小国町 / 置き屋根酒蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は農村景観の中でも重要な要素である伝統家屋について特徴を明らかにしツーリズムへの活用について考察を行った。雨量の多い阿蘇地方は軒の長い主屋や納屋を建てるのが特徴であるが、その中でも南小国町には置き屋根形式の土蔵が約100棟残っている。南小国町の土蔵と主屋について実測調査を実施し、その中でツーリズムに活用されているものについては、活用状況をヒアリングや資料に基づき把握を行った。その結果以下のことが分かった。 ①置き屋根の土蔵が南小国町の集落景観を特徴付けている。主屋も置き屋根にしているものも数は少ないが残っている。元は杉皮葺きであったのを瓦葺きに替えても置き屋根の形式を守っている。置いてあるだけなので台風時に飛んでしまい、修理をする際に、大工の勧めにより現在の様な置き屋根と地屋根の勾配が異なる土蔵が増えてきた。オリジナルは同勾配である。置き屋根にする理由としては、土蔵は置き屋根だという思いが住民にあることが分かった。規模は梁間2間奥行き3間の2階建てが基本で平入りが多い。 ②草葺きの伝統家屋も残っている。茅の上に杉皮を葺く寄棟造りで下屋を回さない形式である。平面は四間取りが基本である。外部も内部も建具で仕切り、壁が殆ど無い。 ③置き屋根の大規模な酒蔵も残っている。土蔵も酒蔵も外壁のオリジナルな仕上げは土壁中塗りで、近年の補修で漆喰を塗っている。小屋組は梁間3間の場合は地棟に登り梁を架ける構造で、酒蔵など大規模になれば中間に陸梁と束により和小屋を組み、地棟を通して登り梁を架ける。 ④土蔵を民宿や食堂として活用している例もあるが、空き家となっているものもある。酒蔵も空き家の状態となっている。観光施設としての活用が望まれる。南小国の景観を特徴付けている置き屋根の土蔵や酒蔵は貴重であり、これらの家屋を保全していくシステムの構築を最終年度は目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年4月に発生した熊本地震により、調査対象地の阿蘇地方も甚大な被害を受け、初年度は殆ど対象地での調査ができず、文献資料からのデータ収集と、比較的被害が少なかった南小国町の調査を実施した。2年目は阿蘇カルデラ内の調査を実施予定であったが、まだ災害復旧が進んでいない集落もあり、予定よりは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は主に以下の2つについて調査を行い、農村景観を保全するためのグリーンツーリズムの条件を考察する。 ①日本のグリーンツーリズムの先進地におけるツーリズムの現状と課題を主にインタビューと統計資料により把握する。 ②農村景観を保全する農家民宿が成功しているイタリアのトスカーナ地方の現地調査を行い、インタビューと資料により、農家民宿の制度や景観との関係を把握し、成功の要因を考察する。 ③その上で、農村景観を保全するための日本における農家民宿を中心としたグリーンツーリズムのあり方を考察する。
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Causes of Carryover |
2016年に発生した熊本地震より、調査対象地の阿蘇地方も甚大な被害を受け、現地調査に入ることができず、当初の調査計画より現地調査が遅れており、旅費分が多く残っている。本年度は遅れていた現地調査、及び国内外の農家民宿先進地の現地調査を予定しており、その旅費に使用する予定である。
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