2017 Fiscal Year Research-status Report
観光地域づくり組織を支えるガバナンスとファイナンス:国際比較を通じて
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16K02100
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
牧田 正裕 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (60292083)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 観光 / まちづくり / ガバナンス / 地方財政 / DMO / 宿泊税 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、海外の主要観光地では、DMO(Destination Management/Marketing Organization)という組織が地域観光の司令塔として重要な役割を果たしている。そうした中、日本でもDMO設立の動きが加速しつつある。そこで本年度は、昨年に引き続いて国内外の先行事例について、ファイナンス(財源)とガバナンスの観点から調査を行った。方法としては先行研究や報告書等による文献調査と現地でのヒアリング調査を主に行った。 まず国内については、観光地マネジメント組織の代表者が集まる会議に参加し、何人かの代表者から現状と課題についてヒアリングを行い、国内観光地の一般的傾向について把握を行った。国内の動向に関して当初、計画に入っていた北海道については、関係者とのアポイントメントがとれず実行できなかったため、高知県の地域マネジメント組織を訪問し、取組み実態について視察並びにヒアリングを行い、現状と課題を把握した。海外については秋季に、米国カリフォルニア州ナパバレーのDMOであるVisit Napa Valley や、サンフランシスコ、ロサンゼルスのエリアマネジメント組織を訪問し、財源である分担金の仕組みを調査した。とくにナパバレーでは、TBID(Tourism Business Improvement District)という仕組みを活用した形での観光地経営の現状についてヒアリングを行った。これらの調査内容についてはケース化した上で、研究会において発表を行い、専門の近い研究者と意見交換を行った。 これと並行して、平成28年度にスイス・ツェルマットのDMOで入手した宿泊税および観光促進税など税に関する資料を和訳し、他の国・地域における事例と比較検討を行った。また、東京で行われた宿泊税など法定外目的税に関するセミナーに出席し、国内の動向についても情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文執筆まで進捗していないことから当初計画よりもやや遅れているという認識に立っている。その理由は次の通りである。第1に、国内外の事例に関する情報収集に追われてしまったことである。国内については日本版DMO設立に向けての各地の動きが非常に流動的であるため、事態の推移を確認してから現地調査を行わなければならなくなったことが大きい。第2に、スイス・ドイツ語の資料の翻訳に時間を要してしまったことである。これらの理由から、未だ論文の完成にはいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は、学会・研究会での報告、論文の執筆に全力をあげたい。そのためにスイス・ツェルマットで追加調査を行う。平成29年度に収集した税制関係の問題に関して不明点の確認を行うためである。その上で、スイス・ツェルマットの観光地経営の動向についての論文を完成させる予定である。当該論文は、観光地マネジメントのために2種類の課税が行われていること、また、DMOだけでなくその基礎となる共同体組織の役割に焦点を当てたものとなる。これにより、DMO組織が地域観光の司令塔として実質的にリーダーシップ機能を果たすためにはどのような前提が必要なのか、に関する知見を示すことができると考えている。次に、観光地経営を支える財源という観点から、国内外の事例を比較検討し、これを論文として発表する予定である。これを通じて、観光地経営にとって必要な財源は、入湯税や宿泊税だけでなく、地域の状況に応じた多様な手段があることを示したい。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた北海道における調査のスケジュール調整ができず、調査地を高知県に変更して実施せざるを得なかった。そのため、その分の旅費相当額が未使用額となっている。当該未使用額については、スイス・ツェルマットでの追加調査に充てることにしたい。
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