2017 Fiscal Year Research-status Report
観光資源として活かすための八重山諸島群の伝統染織物についての研究
Project/Area Number |
16K02101
|
Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
又吉 光邦 沖縄国際大学, 産業情報学部, 教授 (50269172)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久田 多恵 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (40388187)
佐久本 邦華 沖縄キリスト教短期大学, 保育科, 講師 (90772559)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2021-03-31
|
Keywords | 神衣装 / 顔料 / 植物染料 / 形付 / 紅型 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、与那国島の伝統染織物の調査を与那国町教育委員会・与那国町伝統織物共同組合・与那国町徳美工房で行いました。 与那国町教育委員会のご協力で、昭和52年制作の形付(紅型)幕、および寄贈された神衣装の調査をしました。形付(紅型)幕は、サイズや文様について調査。城間栄順さんの制作と思われることを確認しました。一方、神衣装は、最後の神女と言われる与那国町の神職の方の親戚が寄贈したもので、サイズなどを調査した後に、染織技法について顕微鏡を用いて調査しました。調査の結果、木綿地で、特殊な顔料(与那国島の一地域でしか取れない)を何らかの定着材を用いて付着させる方法を確認しました。 与那国町伝統織物協同組合のご協力で、古い衣装数点と与那国花織りの見本帳、ならびに植物染料で染められた絹糸などを調査しました。古い衣装には、繊維の判別ができないもの、読谷山花織りと同じ織り方のものなどを確認しました。見本帳は、古いものから現代のものまで閲覧・および写真撮影ができ、古典柄や現代的な意匠の柄を見る事ができました。現在の問屋は古典柄での反物の注文が多く、伝統的与那国花織りを用いての商品開発は、バックやネクタイなどを手がけてみているもののあまり芳しくないとのことでした。調査の過程で、与那国の水は地下ダムから供給されており、植物染料の定着が非常によいとの経験談を得ることができました。今後、水に含まれる鉱物などの特定が進めば、よりよい植物染料による染織物の生産につながると期待できます。織の色彩は、すべて当地で取れた植物染料によることも併せて確認しました。 与那国町徳美工房は個人の工房ですが、与那国花織りを復活させた工房で、古い意匠並びに神衣装に用いられる顔料を用いての復元衣装の調査ができました。また、その神職が用いる特殊な顔料の提供がありました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、多数の古布裂を竹富島(喜宝院蒐集館)で調査しました。また、平成29年度は、神衣装、多くの古衣装、そして形付(紅型)幕などを調査できたため、おおむね順調に調査は進行していると考えています。 調査による具体的な成果としては、高倍率のデジタル顕微鏡を用いて石垣島の南嶋民俗資料館にある古布裂の繊維の写真を掲載した『南嶋民俗資料館の古布裂』(又吉光邦。南山舎。2018年4月1日)、与那国で得られた繭や植物などの写真を利用した書籍『こどもたちと染めてみよう沖縄の自然』(佐久本邦華。新星出版。2018年3月20日)の出版をいたしました。また、「古文書『ラミー(Ramie)及苧麻』と『簡易絹糸精錬染色法』の翻刻」(又吉光邦。産業情報論集第14巻1・2合併号,pp.1-28,2018.3)も発表しました。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査について: 平成30年度は、小浜島の伝統染織物の調査を行います。当地には、多くの形付(紅型)幕があるため、それらの調査をしっかりと行いたいと考えています。また、古い衣装が各家庭に保存されているとされ、それらの調査を現地の方々の協力を得ながら、進めて行きたいと思います。そのため、研究を遂行する上での課題は、形付(紅型)幕を調査するための場所の確保、ならびに各家庭への古衣装の調査協力の承諾を得ることが挙げられます。また、平成31年度、平成32年度用の調査のために、平成30年度で石垣島の各機関への協力を要請したいと考えています。
研究課題の成果について: 研究課題の成果として、引き続き、学会発表や論文などで報告したいと考えています。現在のところ、平成30年度は、奄美沖縄民間文芸学会で研究代表者(又吉)が発表予定です。
|
Causes of Carryover |
(理由)旅費が想定よりも安く済んだため。 (使用計画)次年度以降において、旅費、あるいは十分な資料を確保するための資料閲覧・借用料に係る支払い金額として用いる。
|
Research Products
(4 results)