2016 Fiscal Year Research-status Report
「ファンタスマタの世界」-西田幾多郎における美学と時間論
Project/Area Number |
16K02106
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 日本哲学 / 西田幾多郎 / 時間論 / 美学 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先行する申請課題「「現在の平面」―西田幾多郎における時間論と存在論」(基盤 C、研究代表者フォンガロ エンリコ、平成 25-27 年)において得られた研究成果を継承し、発展させるものである。これまでに申請者は、西田幾多郎の各時代の著作において、「時間」がどの ように捉えられているかを、イタリア語に全訳しながら分析してきた。その過程において、西田が前期から後期へと独自の哲学を発展させながら、プラトン主義的な「永遠」から、それとは異なる「現在の平面」のような「永遠の今」の非形而上学的な時間論へ進んでいったということが 分かってきた。西田の時間論の中には、晩年のデリダの「幽霊」が中心になる時間論と非常に近 いものがあり、また彼の美学・芸術論が密接につながっていることが明らかになってきた。 そのため、本研究においては、西田の全著作において、「時間」の概念がどのように記述されているかにつ いて抜き出し、各時期の記述を西田の思想展開の中で跡づける。特に、西田の時間論と美学、存在論の関係について、他の哲学者と比較を行ないながら、特にドイツ、イタリアの研究協力者と議論を踏まえつつ、考察を行なう。そのためには、近年継続して行ってきた西田の著作のイタリア語訳を引き続き行ない、著作を精読するとともに、イタリアにおける西田幾多郎全集の出版活動も続ける。平成 28 年度には、西田全集イタリア語版の第一巻として『善の研究』のイタリア語訳の再版をミラノのミメスィス社より出版した。第2巻として『思索と体験』の出版に着手している。 さらに、西田の芸術論について「ファンタスマタ」をキーワードとして、デリダ、ヴァールブル クとの比較研究を進めた。これらの研究の成果の一部として、国内外の学会での発表のほか、イタリア、パドヴァ大学やベルギーのヘント大学にて研究課題に関するセミナー、講演を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西田幾多郎全集イタリア語版の第1巻としての『善の研究』を出版し、現在第2巻の準備を順調にすすめている。時間論の分析をすすめて、国内外において国際学会、国内学会等で数回に渡る講演、研究発表を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に、西田の著作に関してイタリア語翻訳を継続し、校正を行って出版準備をすすめていくとともに、国内外の研究者、特にドイツ、イタリアの研究者らと密な連絡をとりながら、研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
国外出張の一部が、招待講演として旅費の支給を受けたため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の海外出張等にて執行予定。
|