2019 Fiscal Year Research-status Report
解釈学的臨床倫理学の方法論とその基礎としての近代ロマン主義的解釈学の研究
Project/Area Number |
16K02107
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
服部 健司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90312884)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 倫理学 / 臨床倫理学 / 解釈学 / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床倫理学の方法に関して1980年代半ば以降、数多の流派を生んできたオランダで解釈学的アプローチはその命脈を保ってきた。これは他国には見られない特異的な現象である。何故オランダの地において解釈学がなお日常的な活動の中に根づいているのか。この問いは本研究において主要な問いであった。旧ナイメーヘン大学哲学部にて解釈学的アプローチを考案したメンバーの一人、ヴァン・デア・スヘーア、さらに同国における解釈学研究の重鎮、ヴァン・トンヘレンとの面談の後、スピノザから説き始めるベン・ヴェッダーらの著作をはじめとして同国の重要な解釈学分野の成書を紹介され、読み進めている。元来カトリックを基礎に建学された旧ナイメーヘン大学が、神学と親和性の強い解釈学の拠点となったことは理解できたが、宗教色を前景に立てずに解釈学的観点を採り入れた熟議型臨床倫理学の方法(MCD: moral case deliberation)と解釈学的倫理学との関係性についてはまだ不明である。 オランダでは様々な臨床倫理学の流派が併存しつつ、近年そのゆるやかなネットワーク NEONが作られるにいたったが、MCDの諸流儀の開発はとどまることを知らない。最近の動向の中で特筆すべきは、1) 異なる(あるいは敵対し合う)流派を使い分ける傾向の加速、2) 異なる諸流派のいわば最大公約数的な手順型の案出、3) グループ・チーム単位でなく個人レベルで使用可能な、自己対話型の振り返りの手順型(しかもそれに共通するのは、ケースに向き合う医療者感情や身体面の変化へ深く注意を向ける点にある)の案出、そして 4) 医療者側でなく、患者・家族側に寄り添いサポートする臨床倫理支援法の開発普及である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は2つの柱から成っており、1つは近代ロマン主義的解釈学の史的・哲学的研究であり、もう1つはその流れをくむ現代の応用的側面である臨床倫理学の研究である。後者すなわち米国の流儀に対抗する拠点であるオランダの解釈学的臨床倫理学については現地調査・文献研究にもとづきかなりの成果をあげることができたが、他方、前者すなわち近 代ロマン主義的解釈学そのものの基礎的研究の遂行になお時間を要するため、令和2年2月に補助事業期間延長申請を行い、承認を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
口演に応募し採択通知の届いていた欧州の2つの国際会議(ESPMHならびにEACME)の開催が、新型コロナ禍のため、来年に延期されることが決定された。このため研究成果の公表ならびに他国の研究者との直接的な意見交換の機会は減るが、その準備や旅行のための時間を基礎的研究にあてることにしたい。
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Causes of Carryover |
本研究の2つの柱のうちの1つ、近代ロマン主義的解釈学の史的・哲学的研究の遂行になお時間を要し、補助事業期間延長申請を行わなければ研究計画を遂行することが難しいことが昨年度中半ばに判明したため、計画的に支出を抑制した。助成金未使用分は令和2年度秋~冬に開催される国内学会での研究発表の際の旅費等として使用させていただきたい。
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Research Products
(7 results)