2020 Fiscal Year Research-status Report
解釈学的臨床倫理学の方法論とその基礎としての近代ロマン主義的解釈学の研究
Project/Area Number |
16K02107
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
服部 健司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90312884)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 倫理学 / 臨床倫理学 / 解釈学 / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床倫理学は個別具体的なケースの理解に始まり当のケースにおける倫理問題の解決を目指す。臨床倫理学は、米国で誕生したのだが、その流れはむしろヨーロッパ北西部で独自の発展を遂げた。その中心的拠点はオランダであり、そこでは数多の流派が生まれたが、その共通項はケースそのもの理解と医療チームメンバー間の相互理解を深めることである。また、解釈学的アプローチが命脈を保っている。かかる状況の思想的基盤を探ることが本研究の中心的課題であった。そこに解釈学の、より直截にいえばロマン主義的解釈学の影響があるという仮説を立てたが、かの地の研究者たちの意識の事実の次元においてはこの見立ては外れていることが、面談を通して判明した。 他方、臨床倫理学の基礎づけの次元において解釈学がもつ可能性について検討することも、研究課題であった。問われるのは真理をめぐる哲学的解釈学の意義ではなく、臨床倫理学という一領域の基礎づけの可能性である。古代の文献や聖書の解釈にもっぱら対象に限定されたところから解釈学を解き放ち、口語の言表をまで対象に含めたのはシュライアマハーである。文法的解釈と背中合わせに技術的・心理的解釈を見据え、後者において観察、洞察に役割を与え、「話を話者以上によりよく理解する」ことを解釈学の課題としたのもシュライアマハーその人である。これらの言説がディルタイによって意味づけられ、それがガダマーによって主観的・心理的だとして批判されたことはよく知られている。かかる批判からシュライアマハーをまもるために、過度に主観的・心理的な読解を戒める研究がなされている。それはそれで文献学的考察としては一定の意義を有するだろう。しかし、日々、見知らぬ、人生観や価値観を異にする生身の人間を相手として理解し行為する現場に生きる医療者にとっては、かような文献学的な世界にとどまる考察は、角を矯めて牛を殺すものと評価される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、演題(口演)が受理されていた欧州の二つの学会がコロナ禍中にあって開催中止となり、また遠隔授業のための準備に追われるなど、研究活動に関してきわめて残念な一年となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二の中心課題である、ロマン主義的解釈学のもつ可能性について、考察を深め、発表の機会を探る。
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Causes of Carryover |
参加・発表予定であった欧州の国際学会がコロナ禍で開催中止となったため。今年度は国内学会での発表を考慮している。
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Research Products
(6 results)