2018 Fiscal Year Research-status Report
抽象の問題を軸とした初期近代における数学と哲学の相互交流に関する数理哲学史的研究
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16K02113
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 真治 富山大学, 人文学部, 准教授 (70634012)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数理哲学史 / 抽象 / ライプニッツ / 無限小 / 普遍数学 / 哲学史 / 連続体 / 原子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、初期近代における抽象(概念形成)の理論および数学と哲学の関係について、研究を進めた。主な研究成果は以下の通り。 【論文】「ライプニッツの延長概念と抽象の理論―『ライプニッツ-デ・フォルダー往復書簡』の分析―」を紀要に載せた。また、「虚構を通じて実在へ―無限小の本性をめぐるライプニッツの数理哲学―」が『ライプニッツ研究』に掲載された。 【国際的な研究交流】ダヴィド・ラブアン博士(CNRS-パリ・ディドロ大学)を招聘し、日本ライプニッツ協会にて招待講演を行ってもらった。また、普遍数学に関する特別講義を富山大学人文学部にて実施した。また、科学史学会と協同で、ダヴィド・ラブアン博士、および東慎一郎准教授(東海大学)を講演者、武田裕紀教授(追手門学院大学)を司会者として、「初期近代における数学と哲学」についてシンポジウムを実施した。 【書籍】『原子論の可能性』が法政大学出版会から出版され、「ライプニッツと原子論」の章を担当した。また、分担執筆した「『連続体の迷宮』とは何か?―ライプニッツとパースが挑んだ哲学最大の難問―」を含む『人文知のカレイドスコープ 富山大学人文学叢書Ⅱ』として桂書房より出版された。 【翻訳・解説】担当した「パパンとの往復書簡」の翻訳・解説を含む『ライプニッツ著作集 第Ⅱ期 第3巻 技術・医学・社会システム』が工作舎より刊行された。 【研究発表】日本哲学会において、ワークショップ「哲学史研究の哲学ケーススタディ編:ライプニッツの場合」に講演者の1人として登壇し、「ライプニッツと哲学史研究の哲学―連続体の数理哲学史に向けて―」という題目で発表した。また、富山大学「人文知コレギウム」において、「連続体の迷宮」とは何か?―ライプニッツとパースが挑んだ哲学最大の難問―」という題目で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は現代における抽象(概念形成)の理論の展開も踏まえたかったが、初期近代における抽象の理論の整理に想定以上に苦労しており、時間的余裕もなく、そこまで手が回らなかった。 研究時間の確保には最大限努力しているが、年々増加する学務や教育の仕事に、家庭の事情で大変恐縮ではあるが、待望の第一子が誕生し、育児も加わったことが考えられる。 したがって、課題の進捗状況としてはやや遅れているという実感がある。 しかし、国際的な研究交流を行い、ラブアン氏からパリへの短期滞在も招待いただけることになり、その意味では研究は加速しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、ラブアン氏を招くなどして、普遍数学思想に関する新しい理解を得た。2019年度は、新しい研究動向を整理するとともに、普遍数学に関する一次資料の研究を進め、オリジナルな見通しと結果を得たい。 他方で、抽象の問題に関しては、予定よりやや研究が遅れている。これまでの研究成果の一部を論文として出版できたものの、研究発表したものの未だ論文化に至っていないものがあるので、情報をアップデートした上で、それらの論文化の作業を進めていきたい。 初期近代における抽象の問題ないし普遍論争については、ここ数年をかけて、所属大学の講義においてもテーマとして取り上げつつ、研究を進めている。こちらは、まずは全体像を掴むべく、講義録のような形でモノグラフにまとめてみたいと考えている。 また、抽象の問題は、時代や地域、分野横断的な、学際的テーマでもある。そこで、将来的な国際共同研究を目指す一貫として、現在、抽象(概念形成)の問題に関する、古代から現代までを射程とした、シンポジウムないしワークショップを企画中である。そのために、今年度から有志を募って研究会を行い、来年度には成果を学会等で発表できるようにしたい。 これまでの研究の過程で、連続体と抽象というテーマが浮上した。このテーマは、本研究課題のむしろ延長上にあるもので、次の研究課題として行うべきものであって、予定している本研究課題を優先することは言うまでもない。しかし、これまで研究してきた連続体の問題と本課題である抽象の問題との間には、重要かつ不可分な関係があると思われる。具体的には、アリストテレスやライプニッツにおける抽象の理論と連続体の関係や、ホワイトヘッドの「延長的抽象」の概念などを手がかりに、より体系的な仕方で連続体と抽象の問題を考察していきたい。
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Causes of Carryover |
招聘したダヴィド・ラブアン氏が、日仏共同研究計画の助成金をフランス大使館から得ることができた。そのおかげで、ラブアン氏に航空費と滞在費の一部を負担していただくことができ、当初予定していたよりも旅費が大幅に少なく済んだため。
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Research Products
(12 results)