2018 Fiscal Year Research-status Report
「人間の尊厳」と「個人の尊重」―討議的実在論に基づく新たな関係構築の試み―
Project/Area Number |
16K02114
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堂囿 俊彦 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90396705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人間の尊厳 / 倫理コンサルテーション / 有機体 / 臨床倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の実績は以下の三点にまとめられる。 第一に、平成29年度に行った、ドイツにおける倫理コンサルテーションの調査結果を論文にまとめた。日本の倫理コンサルテーションは、主としてアメリカを参考に発展してきたが、ドイツにおける倫理コンサルテーションの歴史や現状を包括的に扱った本稿は、日本の臨床現場に適した倫理コンサルテーションを考える上で重要な資料になると考えられる。 第二に、「人間の尊厳」と「生命」の関係を、対話・討議という視点から検討した。中国の研究者による受精卵に対するゲノム編集をめぐる議論からも明らかなように、「人間の尊厳」と「生命」は密接に関係しているためである。研究成果は日本生命倫理学会、国士舘大学倫理学専攻講演会において発表し、その後論文として発表した。 第三に、臨床現場に実際に対話の場を作り出すために倫理コンサルテーションの教科書『倫理コンサルテーション ハンドブック』を執筆・出版した。本書は、海外における教科書を参考にしながらも、日本において倫理コンサルテーションに携わっている人たちとともに執筆することにより、体系的かつ実践的な教科書となっている。なお、公刊にあたっては、静岡大学人文社会科学部の支援を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、これまでの研究成果を著書としてまとめることと、ドイツにおける学会発表を目的としていたが、いずれも達成することはできなかった。主な理由は二つある。 一つ目は、『倫理コンサルテーション ハンドブック』の執筆・出版に取り組んだためである。本研究を通じて、倫理コンサルテーションという形で臨床現場に対話の場を作り出すことが「人間の尊厳」の尊重にとって重要であることが明らかになったものの、日本では、臨床現場に倫理コンサルテーションを導入するための教科書が存在していなかった。そこでまずは、倫理コンサルテーションという形で日本の医療現場に対話の場を広めるための教科書執筆が喫緊の課題であると判断した。 二つ目は、「人間の尊厳」と生命の関係について検討したためである。伝統的に二つの概念は密接に関連すると見なされてきたものの、本研究プロジェクトの主題である「討議」という観点から検討されてはこなかった。受精卵に対するゲノム編集の問題と「人間の尊厳」の関りも指摘されており、あらためてこの問いに取り組む必要があると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の前半は、平成28年度以降の研究成果を単著としてまとめる作業を行う。また、後半には、著作の成果をドイツにおいて発表するための準備及び発表申込を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた、ドイツにおける学会発表原稿の校正費用を使用しなかったためである。次年度は予定通り、構成費用に充てる予定である。
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