2018 Fiscal Year Annual Research Report
From Suarez to Hume: the history of British Empiricism re-examined from the viewpoint of the scholastic theory of causation
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16K02117
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
秋元 ひろと 三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 因果論 / スアレス / 機会因論 / マルブランシュ / バークリ / 非物質論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,中世以来のスコラ学の伝統,とくにその因果論に着目して,それとの関係という観点からイギリス経験論を再検討することによって,イギリス経験論の歴史をロック,バークリ,ヒュームというトリオの仕事と見なす標準的解釈に代わる哲学史記述の可能性を明らかにすることを目的とする。 研究3年目である30年度は,前年度の成果の一部であるスコラの因果論(具体的には近世スコラ学を代表するスアレスの因果論)を踏まえて,機会因論者として知られるマルブランシュの因果論と、非物質論者として知られるバークリの因果論の比較検討に取り組んだ。その結果,つぎのような研究成果を得た。 マルブランシュとバークリは、ともに物体ないし物質は原因とは認められないとして、スコラの因果論に反する結論に至っている。しかし、二人の間には、つぎのような相違がある。すなわちマルブランシュは,スコラの因果論とりわけ、その標準見解である協働論(神と被造物が協働して原因として作用する)と直に向き合い,その含意を突き詰めれば,それが機会因論(原因として作用するのは神のみである)に帰着することを示すという仕方で因果論を展開した。それに対してバークリは,因果論を,非物質論を中核とする彼独自の形而上学の系として導き出し、スコラの因果論はいわば跳び越すような仕方で展開している。二人は、因果性の形而上学に対するアプローチの仕方という点で、大きく異なっているのである。
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