2017 Fiscal Year Research-status Report
ヘノロジー概念に基づく形而上学史の構築‐哲学史のグランド・セオリーをめざして‐
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16K02119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福谷 茂 京都大学, 文学研究科, 教授 (30144306)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘノロジー / 形而上学 / 存在論 / ギリシア哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋哲学史の全局面へと波及せざるを得ない本研究の特性からして本年度は同時並行でいくつかの分野を扱うこととなった。 ①ヘノロジー概念の哲学史的基礎付けという作業の遂行において、特にギリシア哲学にさかのぼってこの概念の射程をはかる試みに注力した。すなわちソクラテス以前の哲学者たちに関して残されている断片を分析しヘノロジーという視角から解明する試みを能う限り行った。 ②この方面は現在のところ初歩的段階にとどまってはいるが、ヘラクレイトスやアナクシマンドロス、デモクリトスについてヘノロジーを用いて解明できる面があることを確認した。またエレアのゼノンののパラドックスと呼ばれるものについてもヘノロジーの観点からの読み直し作業を進めた。さらにプラトンの『パルメニデス』に関してテュービンゲン学派の所説をヘノロジーを用いて再評価することに着手した。 ④別分野への発展としては、ヒュームをヘノロジカルに読む試み、および三浦梅園の条理学をヘノロジーに対する有力な対抗馬としての二元論の形態として読み解く新しい構想に着手した。上のような研究の進展に伴いヘノロジー概念が持つ包摂力が大きいことが明らかとなったことに伴い、上記のような哲学史的研究にとどまらず、多様な形態におけるヘノロジーとその統一性を解明するためには「ヘノロジー原論」とも言うべきものが必要であることが自覚されてきた。これにこたえるための研究も準備中である。さらに、ヘノロジーを隠蔽する役割を哲学史において果たしたオントロジーの出発点である第2スコラ哲学の母体であるトレント公会議に関するアドリアーノ・プロスぺリの書籍に「アドリアーノプロスぺリ教授について」と題する序文を寄稿した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ヘノロジー概念の展開可能性と基礎づけを古代哲学および中世哲学を視野に入れた哲学史の全体にわたって試みること。 ②カント、スピノザ、ライプニッツを中心とする西洋近世哲学史の諸哲学者において様々な形態と局面に現れているヘノロジーを跡付け、ヘノロジー史観の一層の浸透をはかること。 ③西田幾多郎・田邊元・高橋里美・務台理作・高山岩男においてヘノロジーが我が国に実質的に継承され、注目すべき発展を遂げており、この観点から日本哲学史をヘノロジーを中心とした西洋哲学史の日本における新展開としてとらえなおすことが可能であること。 以上の3点を確証することが本研究の狙いであるが、現在までの進捗状況としては①に関する研究が一番進捗を遂げている。これはヘノロジー概念そのものが現在進行中で変貌を続けているため常に新しい光が既知の哲学者に対して投じられねばならないことに起因している。②は研究代表者の専攻領域に最も近いものであって、すでに相当の蓄積があるため、業績化する作業は随時可能であると考えている。③に関しては現在もっとも需要があるものだと考えられるが、なお①および②の展開を待って初めて定まる点があり試行中である。以上のような理由によりおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘノロジー概念の汎用性のゆえに研究する対象と局面が拡散しがちなきらいがあることを自覚し、研究課題の遂行と達成にあたって何が最も必要とされるかを判別することが必要であると考える。このため今後はヘノロジー概念の全哲学史にわたる基礎づけの作業を従として、西洋近世哲学史の諸哲学者たちの著作においてヘノロジーを検出して確定する作業および日本哲学史研究にヘノロジー概念を導入する導入する作業を主としてその完成と公表を急ぐことに注力したい。
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Causes of Carryover |
平成29年度は課題研究をすすめる過程において、予想以上にヘノロジー概念のおよぶ範囲が広がるという事態に直面したため、新しく現れてきた研究対象間でどのような優先順位をつけて着手すべきか、今後の展開の計画を含めて改めて検討した方がよいという状況となった。このために次年度使用額が生じたが、研究課題推進のための新しい研究対象の整理にも見通しがついたので今後は拡大されたヘノロジー概念に基づいた研究を推進することになる。使用計画としては新対象に関する資料・文献の収集を重視していくことにしたい。
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Research Products
(2 results)
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[Book] トレント公会議2017
Author(s)
アドリアーノ・プロスペリ
Total Pages
284
Publisher
知泉書館
ISBN
978-4-86285-258-8