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2018 Fiscal Year Research-status Report

ヘノロジー概念に基づく形而上学史の構築‐哲学史のグランド・セオリーをめざして‐

Research Project

Project/Area Number 16K02119
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

福谷 茂  京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (30144306)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2021-03-31
Keywords形而上学 / ヘノロジー / カント / 近世哲学 / 西洋哲学
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、引き続きヘノロジー概念による西洋哲学史の見直し作業として、とりわけプラトン哲学の新しい解釈の可能性を探った。またプラトン解釈をめぐって現れてきている諸解釈を英米独にわたってトレースした。
具体的にはプラトン解釈上議論が多い『ティマイオス』篇に取り組み成果を得た。プラトンがこの作品に与えた『国家』篇の翌日に行われた対話という設定の意義を生かすことでこの作品の性格と目的を明らかにすることができるという見通しのものに、この作品で繰り広げられるコスモロジーを『ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』という一連の作品におけるテーマの展開としてとらえることができることを明らかにした。『国家』篇および『ティマイオス』篇を視野に取り入れることでいわゆるソクラテス四書の狙いを確定することができるというのが、得られた見通しである。
このテーマは近世哲学史と直結している。シェリングの最初期の草稿『ティマイオス・ノート』はカントによって『ティマイオス』篇を解釈する試みであり、プラトン・カント・シェリングをヘノロジーの観点から眺めることでコスモロジーとして一本につないでとらえることが次なる課題として浮かび上がってきた。
カント解釈上ではヘノロジカルな観点からの解釈を『純粋理性批判』にとどまらずに批判前期の著作である『感性界と叡智界の形式と原理』に及ぼすことに成功した。これによってカントという哲学者の全体にわたりヘノロジーの観点を浸透させることができるという見通しを得た。
またスピノザ、ライプニッツ、ジェンティーレなど従来から逐次ヘノロジカルな解釈を加えてきた哲学者たちに関してもその解釈を立証する成果が得られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は二つの面をもっている。一つは、ヘノロジー概念そのものの形成であり、今ひとるはそれに基づく西洋形而上学史の見直しである。現在までヘノロジー概念の形成に関してはある程度の成果が得られた。しかし、この概念は哲学史を理解するための研究概念であって、絶えず具体的な哲学者との対話において成長させねばならない。どれくらいの射程を持ちうるかがヘノロジー概念には問われているからである。
本年度の成果としては特に従来のようなオントロジー(存在論)との対比におけるヘノロジーにとどまらず、新たにコスモロジー(宇宙論)としてのヘノロジーという観点が得られたことが大きな収穫である。このことによって、上述した通り、本研究にとっての出発点であるカント『純粋理性批判』および『遺稿』の解釈がコスモロジーとの関係付けがプラトンおよびシェリングを媒介することによって展開し得ることとなった。これはいまだに全貌が解明されないままである『遺稿』の新解釈の可能性を示唆するものである。

Strategy for Future Research Activity

上述のように、ヘノロジーの観点からの形而上学史研究にとっては古代哲学においてどれくらい掘り下げることができるか、ということがポイントであることがますます明らかとなってきた。とりわけ、プラトンのイデア論に対してヘノロジーから照明を投げかけることによって従来バラバラにされがちであったイデア論、プシュケー概念、国家論を貫く形での解釈を試みることが許されると判断を下した。このため、今後は古代哲学に関してもウエイトを加えて研究を推進したい。そのことが同時に近世哲学史の解釈において実り豊かなものであることが明らかとなったからである。特に最初期のシェリングがプラトンの『ティマイオス』篇研究に腐心したことは決定的事実であり、シェリングはプラトン解釈のためにカント以外のリソースを必要としていないことは驚くべきことである。これはプラトンとカントがヘノロジーの形態論において位置づけられる哲学者であることを更に立証したと考える。これに基づき、いわゆるドイツ観念論に対してもヘノロジーがどの程度新しい観点を生み出すかという問題に今後は注力していきたい。

Causes of Carryover

当該年度は退職年度に当たりそれに伴う諸行事・諸業務のため研究計画の実施が遅れた。翌年度においてはその事情が解消されるので計画に基づき使用したい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Presentation] カントにおける経験と理性2018

    • Author(s)
      福谷茂
    • Organizer
      日本カント協会
    • Invited

URL: 

Published: 2019-12-27  

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