2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of History of Metaphysics based on the concept of Henology
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16K02119
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
福谷 茂 創価大学, 文学研究科, 教授 (30144306)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘノロジー / カント / 形而上学 / 純粋理性批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘノロジー に関するこれまでの研究を進化拡大する作業に従事した。本研究の出発点はカント哲学であるが、従来のカント研究の難点はいわゆる沈黙の10年間と呼ばれる1770年の就職論文から1781年の『純粋理性批判』第1版の公刊に至る時期をうまく捉えきれない点にあった。すなわち部分的にはすでに『純粋理性批判』第1版と同じ主張を持っている就職論文がなぜそのまま進展を続けることができるに沈黙せざるを得なかったのか、という問題である。本研究においてはこの問題に関してヘノロジー の観点を投入することによって理解と解決のための新しい着眼点を得た。詳しくいうと、就職論文においては第1部である「感性界の形式と原理」と第2部「叡智界の形式と原理」とがまったく水と油のように異質であって有機的に結合されていないという見方が研究者を支配していた。これに対して本研究が可能としたヘノロジーの観点は、空間と時間という感性界の形式にヘノロジー の原理である「一」を同定した点にカントの画期的な意義を認め、それがしかも叡智界ではなく感性界であるという点に「一」との関係の成立がすなわち個体の成立にほかならないというヘノロジー 本来の論点におけるカントの独自の位置を捉えることができた。このような空間と時間とのヘノロジカルな性格において個体として成立したことが反転したのが、第2部の叡智界における実体的存在としての出現にほかならないという構造が1770年の就職論文の急所である。すなわち就職論文はヘノロジー として非常にユニークな形態を獲得しているのであり、就職論文から1781年の『純粋理性批判』への道はヘノロジーへの道として一体的に理解することができるという見通しを得た。
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Research Products
(2 results)