2017 Fiscal Year Research-status Report
空間にかんする綜合的な人文学研究--哲学と創造実践の対話
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16K02121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 雅武 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (10636335)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人新世の哲学 / 共存空間論 / ツリーとリゾーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、哲学研究に関しては、人間存在の空間性についての考察を、「人新世」についてのチャクラバルティの論文で提起された「人間世界と自然世界の境界の不分明化」の問題に即して展開を試みた。具体的には、ジル・ドゥルーズの『差異と反復』『千のプラトー』の読解を踏まえたと、ハンナ・アーレントの制作(work)概念についての考察を踏まえた研究である。いずれも文献研究だが、論文作成(「共存空間論」『現代思想』6月号、「円環が滲み出し、溶け出していく」『現代思想』12月号)、および単著(「人新世の哲学」人文書院)の刊行に帰結した。以上の研究は、人新世という理科系的な問題について哲学的な考察を行う点で文理融合的といえるが、刊行後は、建築家・都市プランナーなどにも読まれ、高い評価を得ている。また、ティモシー・モートンの著作(Ecology without Nature)の読解および翻訳作業を行った。これは、エコロジカルな実在論の最新の知見を日本国内の知的文脈に導入を試みる点で意義のあるものといえる。さらに、モートンの読解との関連で、カンタン・メイヤスーやグレアム・ハーマンの著書の読解を行い、それをもととする単著の刊行計画を立てた。空間実践の研究に関しては、建築家への聞き取りおよび実作見学を継続した。9月にはミサワホーム主催の「Aプロジェクト」関連のシンポジウムにて建築家二人との討論を行い、11月にはCINRA主催のトークイベント「ニューフラットフィールド」でアーティストとの討論を行うなど、研究成果のアウトリーチ活動を実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、英米系の環境哲学の研究を試みる予定だったが、チャクラバルティの論文の読解等を経て、人新世の問題について考察することが重なった結果、大陸哲学を環境哲学的に読解することになった。結果として、人工と自然のハイブリッドについて考えるという当初の試み通りではあったが、若干の方向転換はあったと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、まずはティモシー・モートンの翻訳を終えつつ、その読解・研究をベースにして、人間の条件の空間性・環境性についての考察を進め、単著にしていく。また、2015年に刊行した日本語単著「生きられたニュータウン」を、都市計画のもとでの空間の貧しさを問いつつ、あらためて人間の空間の豊かさとはなにかを問う著書としてバージョンアップさせ、英語で刊行する方途を探りつつ、英訳作業を行っている。その過程では、欧米の学会に参加するなどして、自分の考察のブラッシュアップをはかりたい。
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Causes of Carryover |
昨年度は、単著の作成のため、夏休みは執筆に没頭した。そのため、当初予定していた海外出張(ティモシー・モートンとの会合・打ち合わせ)を実行できなかった。それで海外渡航の費用が消化できなかった。
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Research Products
(6 results)