2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02126
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大西 克智 熊本大学, 文学部, 准教授 (60733996)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ライプニッツ / モンテーニュ / 自由意志 / 運命と必然性 / 自然 / デカルト |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度の主要目的は、近世哲学を代表する思想家の一人であるG. W. ライプニッツによる自由意志論を、意志と自由の系譜学という本研究の枠組みにおいて、考究する点にあった。折から、ライプニッツ自由意志論を具現する『弁神論』に関するフランス語・ドイツ語の重要な研究書が複数公刊されたため、複数の研究者によるさまざまな解釈を詳しく検討し、自説の確立に注力した。独立した論考として最終的な立場を示すにはいましばらくの時間が必要である。 また、上記のように進化拡大を目指しているライプニッツ理解と並行して、16世紀フランスの思想家モンテーニュに関する研究をいっそう進める必要性が新たに認識された。本研究代表者は『西洋哲学史III ポストモダンの前に』(講談社選書メチエ)においてモンテーニュ論を公表し、本研究の基盤となる自著『意志と自由 一つの系譜学』(知泉書館)でもモンテーニュ的「自然」概念の重要性を強調したが、人間の意志の出処とその働き方に関するモンテーニュの記述はさらなる考察に値いし、そのためには主著『エセー』の包括的な分析が必要であることが分かった。この点に関する研究の進捗は、本年度、実に大きなものがあった。日仏哲学会主催のモンテーニュに関するシンポジウムでも提題として自説を公にし、この提題をブラッシュアップしたモンテーニュ論がまもなく公刊される『フランス哲学・思想研究』誌に掲載される予定である(4月30日現在校了)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」に記したモンテーニュに関しては、本研究の申請段階ではさほどの比重を予想していなかったため、その研究に相当の時間を割いた結果として、ライプニッツ論の進行は計画よりもやや遅れている。しかし、自由意志論そのものの理解のために(とりわけ本研究代表者の自由意志論の核をなすデカルトの自由意志論をより深く理解するために)モンテーニュ研究が欠かせないことが明瞭に認識され、実際に『エセー』の分析作業が相当に進んだことの意義は大きいと認識している。ひいてはライプニッツ論を深めることに必ずや繋がるからである。その点からして、研究全体としては「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前二項目に記したところからしておのずと、ライプニッツ自由意志論の構築と、モンテーニュは『エセー』の検討を、それぞれ継続することが必要になる。方策としては、オーソドックスに、先行諸研究の検討をしながら自説の確立を目指すことになる。渡仏の上で当地の研究者と意見交換することも、今年度がそのために最善のタイミングであるかどうか現時点では見極め切れてはいないものの、考えている(この点は当初の研究計画にも挙げてある)。同時に、モンテーニュに関しては、一冊のモノグラフとして見解を纏める予定である。その作業は、当初の計画予定にあったマルティン・ルター研究に繋がってゆくであろう。
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Causes of Carryover |
学会発表準備期間が当初想定以上に長くなり、書籍を購入の上で検討する時間が相対的に短くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度購入の上検討する予定であった著作等の購入に充てる。
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