2020 Fiscal Year Annual Research Report
Rationalism and sentimentalism in the modern British Philosophy: Hume and the common sense school
Project/Area Number |
16K02134
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
矢嶋 直規 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10298309)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ヒューム / バトラー / 自然宗教 / 思惟可能性 / 懐疑主義 / 自然主義 / 人格同一性論 / 魂論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は研究の最終年度にあたり、これまでの研究を総括するとともに、次の発展的主題につながる課題を研究することができた。近代英国哲学において、合理論および自然神学に対する懐疑を経験に基づく蓋然性によって補完することで経験論の体系が成立し、そして経験論が経験へのさらなる信頼に基づく常識哲学へと発展した道筋を明確にすることができた。また合理主義批判と感覚論から常識哲学が成立した具体的な事例を、自然宗教をめぐる論争、とりわけヒュームの宗教論に即して考察した。その成果はコロナの事情でオンライン開催となった国際学会(ISSP)において"Probability and Conceivability in David Hume and Bishop Butler"として発表した。その主題をさらに発展させ、ヒュームにおけるキリスト教神学の影響の解明を研究した。2021年1月30日のオンライン研究会で「バトラーとヒュームの魂論と人格同一性論」と題する発表を行った。『人間本性論』の「魂の不死について」はキリスト教神学と直接に関係する主題であり、ヒュームのキリスト教神学への批判が明確に表れている個所である。ところが従来の研究ではこの主題の位置づけがしばしば軽視されてきた。私はヒュームが論じている主題が人格同一性についての主題であることを論証した。これによってヒュームと理神論の関係についての従来の学説を修正する手掛かりを示すことができた。さらにはヒュームが影響を受けた同時代の神学者であるジョゼフ・バトラーの「人格同一性論」との関係に新たな光を当て、バトラーの人格同一性論の翻訳(本邦初訳)を解題をつけて公刊する成果につながった。またヒュームの『自然宗教についての対話』にについても新しい解釈を加えることができた。その成果は『社会思想史研究』に書評論文として掲載される。
|