2017 Fiscal Year Research-status Report
進化心理学の方法論を検証する――「進化的機能分析」を超えて
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16K02136
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松本 俊吉 東海大学, 現代教養センター, 教授 (00276784)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 進化心理学 / 進化的機能分析 / 適応主義 / 動物行動学 / エソロジー / ティンバーゲン / 4つの問い |
Outline of Annual Research Achievements |
9月に開催された生物学基礎論研究会において「ローレンツ/ティンバーゲンの動物行動学の遺産」と題する報告を行った。これは、進化心理学の学問的先駆である社会生物学の、そのまたさらに先駆といえる動物行動学(エソロジー)の思想的意義について、ティンバーゲンの有名な「四つの問い」――すなわち因果性、生存価、個体発生、進化――を中心に考察したものである。この4つの問いは、当時異なる視点からバラバラに遂行されていた動物行動研究を、エソロジーの方法をベースに「行動の生物学」として統合することを目指したものであったが、現実にはティンバーゲンの思惑とは逆に、その後動物行動研究はますます分業化されていく。ウィルソンやドーキンスの社会生物学は、当初実証的研究の展望が立たなかった「因果性」と「個体発生」の問いを捨て、「生存価」と「進化」にフォーカスすることによって大きな成功を収めたが、逆に彼らが無視した残り二つの問いが正当にクローズアップされるには、1970年代終わりの進化発生生物学の登場を待たねばならなかったのである。 次に、本課題研究のテーマにより直結する成果としては、10月に開催された「Biology & Philosophy国際論文投稿ワークショップ」という会合において、”Evolutionary Functional Analysis Revisited”と題する口頭発表を行った。ここでは、進化心理学の方法論的基礎である「進化的機能分析」は、検証できない前提に立脚しているがゆえに脆弱であるという批判に対して、「進化的機能分析」の役割は最終的に経験的検証にかけられる仮説を導く「発見法heuristic」にすぎないのであるからその論理的整合性は問われない、という進化心理学者の側からの応答の妥当性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科学基礎論学会の編集委員長の職を拝命したことで、相当の時間とエネルギーを投入せざるを得なくなった。また大学のカリキュラム改革で、新規の講義を構築する必要が生じ、そちらにもかなりの時間とエネルギーを投入した。結果的に、本研究への「エフォート」の配分が、切り詰められてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度が三年間の助成機関の最終年度となるので、今年度は本研究課題の下で是非とも国際ジャーナル(Philosophical Psychologyなど)に英文論文を投稿し受理される、という目に見える形で成果を残す。
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Causes of Carryover |
学内外の業務多忙のため、予定していた国際学会等への海外出張を見合わせねばならなくなった。
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