2018 Fiscal Year Annual Research Report
Verifying the Methodology of Evolutionary Psychology: Beyond 'Evolutionary Functional Analysis'
Project/Area Number |
16K02136
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松本 俊吉 東海大学, 現代教養センター, 教授 (00276784)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 進化心理学 / 進化的機能分析 / 適応主義 / 発見法 / 前進的・演繹的推論 / リバースエンジニアリング / 機能主義 / 構造主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、8月に開催された日本進化学会で「適応的説明はデフォルトとされるべきかという問題をめぐって」と題する口頭発表を行い、進化心理学の基本的方法論である適応主義の妥当性に関してBehavioral and Brain Sciences誌上でPaul Andrews et al. (2002)ら進化心理学者によってなされた議論と、それに対する哲学者Elisabeth Lloyd (2015)による近年の反論を中心に、自然選択に訴える適応的説明と、外適応・スパンドレル・発生的制約等に訴える非適応的説明とは果たして相互排他的なのかという問題を考えた。報告者は、1)「考えうる限りの適応的説明」の成功/不成功を示す挙証責任はどちらの側にあるのか、2)果たして適応的説明と非適応的説明は相互排他的なのかという観点からこの問題を分析した。 さらに9月に開催された生物学基礎論研究会にて、「適応的説明はデフォルトとされるべきか」と題する、上記の報告をさらに発展させた発表を行った。報告者は、進化学会で検討した原理的な問題を、サンショウウオの足の指の数の進化をめぐる発生論者=構造主義者のDavid Wake (1991)と、適応主義者=機能主義者のHudson Reeve and Paul Sherman (1993)との論争の解釈に援用した。その際「内的選択」の概念に訴えることによって、「制約のゆえに形質Bでなく形質Aが発現している」という発生論的/構造主義的説明を、「形質Aは、内的な構造的安定性の観点から形質Bよりも優れているがゆえに選択されている」という選択的/機能主義的説明に読み替えることは可能なのか、という問題を検討した。 この3年間は出版された業績こそないが、「進化的機能分析」という進化心理学の根幹をなす適応主義方法論の検証という申請当初の研究目的は、着実に深化した。
|