2017 Fiscal Year Research-status Report
概念の非定義的側面が科学において果たす役割の哲学的検討:生物分類学を例にして
Project/Area Number |
16K02137
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
網谷 祐一 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00643222)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊勢田 哲治 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80324367)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 種 / 定義 / 還元主義 / プロトタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書の研究計画欄では、本研究助成における三つのプロジェクト――1. 一般種概念と個々の種の定義の関係、2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起、3. 生態学における種――について記した。2017年度は主に1.および2.で具体的研究実績があったのでそれについて述べる。 1. 上に述べたように研究代表者は一般種概念と個々の種の定義の関係についての論文を準備していた。前年度(2016年度)は二つの国際会議で成果を発表し、2017年2月にJournal of Philosophical Ideas誌に論文草稿を投稿したところアクセプトされ、同年8月に掲載された。 2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起。また研究代表者と研究分担者は、種問題に哲学者デレク・パーフィットの人格の同一性についての還元主義的説明を応用する共著論文を準備していた。これについては論文草稿を国際生物学の歴史・哲学・社会研究学会の大会(2017年8月、於サンパウロ大学、ブラジル)にて「What can species theorists learn from Parfit?」と題した発表を行った。また代表者は鈴木貴之氏(東京大学)より招待を受け、「科学哲学と精神医学の哲学セミナー」(2017年3月、於東京大学)にて「種問題から考える自然種概念の役割」と題する発表(内容には本課題の研究成果を含む)を行った。 また研究代表者は本プロジェクトの着想の源の一つである認知心理学における二重過程説と科学者の思考様式の関係について、『臨床心理学』誌に二重過程説といわゆる「心の理論」との関係を解説する文章を掲載した(「二重過程説と心の理論」)。またこれに関係する講演を「〈心と文化の進化論〉の地図」と題してシンポジウム「進化と文化」(2017年2月、於一橋大学)にて行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(2017年度)の研究進捗状況は、上で記した三つの主な研究プロジェクトのうち第一および第二のもので進展が見られたため、全体として順調に推移したと言える。以下個別のプロジェクトについて進捗状況を述べる。 1. 一般種概念と個々の種の定義の関係についての論文。上で述べたように2017年度は前年度に国際会議で発表した草稿を国際哲学雑誌に投稿し、掲載された。したがって、このテーマについては研究計画開始時の目標をおおむね達成した。 2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起についての共著論文。このプロジェクトについても研究代表者は共著者(研究分担者)との緊密な連携の元に研究は進展している。前述の通り昨年度は国際会議で発表したが、今年度もCCPEA(東アジア現代哲学会議)などいくつかの国際会議に発表の申し込みをしており、そこからのフィードバックをもとに論文の投稿を目指す予定である。 3. 生態学における種についての論文。代表者は論文の構想を発展させている。
またこれとは別に、研究代表者のこれまでの種問題についての研究を研究書として出版する計画が進んでおり、現在出版社と共同作業を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画について、前述の三つのプロジェクトに沿って述べる。 1. 一般種概念と個々の種の定義の関係についての論文。先に述べたようにこのプロジェクトについては論文が出版され元々の目標を達成した。 2. 「種問題に対するパーフィット的還元主義」の提起についての共著論文。先に述べたように2018年度は、CCPEA(東アジア現代哲学会議)などいくつかの国際学会に発表を求めて投稿しており、採択された場合は発表する予定である。またその後国際誌への投稿を試みる。 3. 生態学における種についての論文。2018年度には、研究代表者は議論に必要な生態学教科書・論文の調査を行い、議論をまとめる予定である。 先に述べたようにこれと平行して研究代表者のこれまでの種問題についての研究を研究書として出版する計画があるので、2018年度内に第一次稿が完成するよう努める。
|
Causes of Carryover |
(理由)2017年度は海外出張用経費(交通費・宿泊費)として45万円を計上していたが、研究代表者が7月に行った出張の経費が38万円あまり(諸経費含む)と見通しを下回った。3月の東京大学における発表は先方からの招待であり交通費および現地での宿泊費について全額助成を受けた。さらに2018年度に研究代表者が複数回海外出張をする可能性があることを考慮すると、ある程度の予算を残しておくことが研究業務のスムーズな執行に不可欠であると判断し、それに配慮した予算執行になった。これが次年度使用額が生じた理由である。 (使用計画)「今後の研究の推進方策」で述べたように、2018年度は研究代表者・分担者が海外の国際会議にて研究発表を行う予定である(約35万)。残余金額については消耗品および国内旅費にて使用予定である(約40万)。
|
Research Products
(7 results)