2017 Fiscal Year Research-status Report
西周の「哲学」の再検討を通じて実証哲学を新たに展望する
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16K02140
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安孫子 信 法政大学, 文学部, 教授 (70212537)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実証哲学 / 西周 / オーギュスト・コント / 大森荘蔵 / 社会学 / 心理学 / 論理実証主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度には、ヨーロッパ19世紀の実証哲学に学び、忠実にそれを日本に導入しつつまさにそのことによって、その実証主義を修正し補完する必要に迫られていった西周の仕事、つまりは、彼の命名による「哲学」の意義の核心に、さらにもう一歩迫る成果を上げることができたと思う。 研究は、西が踏襲しようとしたオーギュスト・コントの実証哲学の、西が慧眼にして見定めていく諸難点の解明と、その難点を乗り越えようとして西が行っていった哲学的試みの内実の解明との二段階のものであった。コントの実証哲学の難点ということでは、近刊の『現代フランス哲学入門』(ミネルヴァ書房)で分担執筆した「オーギュスト・コント」の項で、諸論点の整理をかなり押し進めることができた。さらにこの作業は、アメリカ、サンノゼ州立大学教授でコント研究の泰斗メアリー・ピッカリング氏を招き、2日間にわたって行ったワークショップ、「コント実証哲学の二つの顔」(12月14日/16日、法政大学)でさらに広く行われていった。コント自身が、自らの難点を解くべく行っていった社会学から人類教への乗り越えは、西による(前期)コントの乗り越えと軌を一にすることなのであるが、コント自身の試みとの比較で、西の企図の哲学的意味はさらに明確となっていったのである。なお、このことでは、20世紀の実証主義に対し、同様の対峙を行っていった大森荘蔵の仕事の検討を、パリ11月2日/3日/4日の大森パネルを組んで行うことができたのも有効であった。こうして西の「哲学」について徐々に明らかにされていったのは、一言で言って、西の心理学の仕事の重要性ということになるが、その詳細を、西の『人世三宝論』によりつつ論じた論考「西周の新しい実証哲学―「人世三宝論」が示唆するもの」を年度末に、『国際日本学』15号(法政大学国際日本学研究所、2018年3月)に掲載、刊行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西周の唱えた「哲学」について、その実質において19世紀ヨーロッパの実証哲学からなっているという視点からの「哲学」の検討が、本研究の本旨である。 西周の「哲学」がどれほど実証哲学の理念とプログラムに貫かれたものであったのかの検討と確認を、実証哲学の創設者であり西周に直接影響を与えたオーギュスト・コントの仕事との綿密な対比で行ったのが前年2016年度の作業であった。 それを踏まえて、本年2017年度には、研究の同じ枠組みに依拠しつつ、コント実証哲学の難点にむしろ向かって、それを西周はどう見定め、それに西周はどう対処しようとしたかの確認を行っていった。この実証哲学の難点の乗り越えは、実はコント自身の内にも起こっていて、そこにいわゆる「二人のコント」の問題も生じているのであるが、そのコント問題も踏まえつつ、西がコントの難点をどう理解し、それの解決をどういう方面で図って行ったかの確認がなされていった。西はコントの難点を、コントの生物学と社会学との間、コントの骨相学(脳生理学)に認めていったのであり、その解決を、骨相学と社会学との間にさらに、コントが退けた心理学(西のことばで性理学)を構築し挟み込むことで、あくまでも実証的に解いて行こうとしたのである。本年度にはその西の心理学の仕事の内実を、主に「人世三宝論」によりつつ概観することまで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の成果を踏まえて、2018年度には、西の心理学の内実をさらに、西の心理学・哲学諸論考を広く検討して明らかにしつつ、それが含むことになっている、社会・道徳的側面を、西がコントから離れてJ.S.ミルやヘブンから得ているものにも依って、明らかにしていく。ここでは西が視野に入れ得ずにいた後期コントの人類教が含む人間学、倫理にも戻る必要があって、これらと比較しての、西の、心理学の哲学の独自性の見定めが行われていく。西の「哲学」は実証哲学であり続けたが、コントとは異なり、それは社会学の哲学にではなく(また、ベルクソンのように生物学の哲学にでもなく)、心理学の哲学に向かって行った。しかもそれは卓抜した仕方によってであって、その心理学の哲学は、心身の対立の問題、個と社会の対立の問題、といった形而上学的諸問題を巧みに解くものにもなっているのである。このようにして、西の「哲学」が一つの卓抜な実証哲学であることを示して、本研究はとりあえず終着することになる。
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Causes of Carryover |
物品費への支出が予定ほどの金額にならなかった。課題研究関係の図書・資料の購入費が予定の金額に至らなかった。新刊情報にさらに注意し、次年度には、必要有用な図書・資料の購入で漏れがないようにしていきたい。
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Research Products
(9 results)