2016 Fiscal Year Research-status Report
生命と健康に関わる倫理コンサルテーションの価値構造についての研究
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16K02142
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
吉武 久美子 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (90468215)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合意形成 / 倫理リスク / 倫理コンサルテーション / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「生命と健康に関わる倫理コンサルテーションの価値構造についての研究」は、医療における倫理的問題解決のための「倫理コンサルテーション」のもつ倫理的価値の構造を明らかにすることを目的とする。平成28年度は、医療現場における倫理的問題の発生予防・問題解決のためのコミュニケーションの分析を行うために、医療の合意形成理論を用いる看護者から、活用状況について調査およびインタビューを実施した。 調査票による調査では、対象者33名の看護職のうち60%以上の人が、合意形成のコミュニケーション技術を用いることができていた。その中でも話し合いを行う際に必要な10項目のルール、ファシリテーション技術の使用は、85%の人が実践していた。しかし、合意形成のコミュニケーション技術の利用の程度については、対象者によって異なっていた。 3名の看護職を対象にしたインタビューによる結果では、看護職は、コミュニケーション技術を用いて、患者とその家族、看護職との間で、互いの関心・懸念を明確にするだけなく、話し合いの適切な時期を設定し調整していた。話し合いでは、目標の共有、問題解決のための方法を模索することで、近い将来起きるかもしれない倫理リスクに備えて、現在可能な方法が検討されていた。 今回の結果から明らかになったことは、看護職が現場に潜在する倫理リスクを把握して、問題発生予防のために、合意形成のコミュニケーション技術を有効活用していたということである。本成果は、2つの国際会議、12th Annual International Conference on Clinical Ethics & Consultation, 22th Annual WAML World Congressにて報告した。また、書籍『環境と生命の合意形成マネジメント』にて、調査の結果および合意形成を含んだ倫理研修の実践についてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、日本の医療現場における合意形成のコミュニケーション技術の現状を明らかにするために、調査の実施を予定していた。実際、計画通りに調査票とインタビューを用いて実施することができた。また、それらの成果を2箇所の国際学会にて発表することができた。また、今回の成果および調査対象者となった看護職への合意形成理論を含めた倫理研修の実践についても、著書「環境と生命の合意形成マネジメント」の中で示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の調査から、合意形成のコミュニケーション技術の活用状況を把握することで、合意形成理論が、日本の医療現場での「倫理リスク」とその対処に活用できることを明らかにできた。次年度は、「倫理リスク」に対応する合意形成理論の活用方法の内容をさらに深く分析するために、多職種連携のために重要な概念を考察していきたい。それと同時に、今回の調査では、対象者数が少数であったことから、今後さらにデータの信頼性を高めるために、次年度も調査は継続していく。 次年度の目的は、「欧米の倫理コンサルテーションに含まれるコミュニケーションの構造」を考察することである。その視点として、今回の結果で得られた「倫理リスク」とその対処方法と倫理的問題解決のためのコンサルテーションとの相違点、医療者への現任教育としての倫理教育のあり方をも含めて展開したい。
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Causes of Carryover |
使用した航空券代が予定より安く購入できたので2万円程度残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の未使用額は、図書関係の物品費で使用する予定である。
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