2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02143
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (50398989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
直江 清隆 東北大学, 文学研究科, 教授 (30312169)
北野 孝志 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 教授 (20390461)
紀平 知樹 兵庫医療大学, 共通教育センター, 教授 (70346154)
本田 康二郎 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (40410302)
寺本 剛 中央大学, 理工学部, 准教授 (00707309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 技術哲学 / 技術倫理 / 最先端技術 / 環境倫理 / ドイツ技術者協会 / 自動運転技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、第一に、技術倫理の動向として指摘される「価値論的転回」について、それが技術哲学で持ちうる意味について考察した。特に、「平成28年度・技術哲学科研研究会」を2017年3月10日(金)に石川県政記念しいのき迎賓館にて開催して、本科研のメンバーである紀平知樹(兵庫医療大学)、寺本剛(中央大学)、北野孝志(豊田高専)、本田康二郎(金沢医科大学)、金光秀和(金沢工業大学)がそれぞれ研究発表を実施して、ドイツにおける技術哲学の動向や環境哲学・環境倫理の議論などを視野に入れながら検討して、メンバー間で成果を共有することができた。なお、この研究会は科研費若手研究(B)「長期的リスクの公正な分配に向けた世代間倫理の構築」(課題番号26770010 研究代表者 寺本剛)との共催で実施され、鈴木俊洋(上智大学)と寺本剛(中央大学)の共同研究による発表もなされた。また、直江清隆(東北大学)と金光が応用哲学会にて発表するなど、学会発表を通しても考察を進めた。 第二に、研究代表者である金光が2016年5月18日から20日にかけてドイツで開催された「The Forum on Philosophy, Engineering & Technology」 (fPET) に参加して、研究発表を実施した。この発表は、これまでの技術倫理に加えて技術哲学の考察を進めることの必要性を論じたもので、本科研の方向性を確認する意味もあった。これにより、国際学会での発表を通した情報発信および理論的考察の方向性の確認という当該年度の第二の目標を一定程度達成することができた。 第三の目標である、emerging technologyについての社会的提言に向けた予備的考察はやや遅れているが、上記研究会の共同研究から、自動運転技術のフィールドワーク研究という新しい課題が明らかになり、さらに研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本科研費では、第一に、「技術哲学の価値論的転回を目指した理論的考察」を進めるために、文献調査だけではく、定期的に研究会を開催して、それぞれの考察を検討することを目指しているが、平成28年度は研究会を1度しか実施できなかった。その研究会自体は大変有意義なものであったが、さらに定期的な研究会の開催ないしは定期的な情報交換の機会を設けることにしたい。 第二に、「国際学会での発表、国際的な研究会の実施とそこでの議論の発信」を目標としているが、この点は「The Forum on Philosophy, Engineering & Technology」 (fPET) への参加および発表によって一定程度達成されたと考える。なお、当初はバルセロナで開催予定の「Society for Social Studies of Science」(4S)で発表し、今後の理論的考察の方向性を確認する予定であったが、本科研費の内容により近いfPETの研究大会(2年に一度開催)が当該年度に開催されるという情報を得たことにより、予定を変更した。 第三の「emerging technologyについての社会的提言に向けた予備的考察」についてはやや研究が遅れている。当初は人工知能がもたらしうる問題を具体的問題として研究する予定であったが、領域が多岐にわたり、また問題が複雑でかつ状況の変化がはやく、なかなか体系的に考察することができなかった。今後は、自動運転技術のフィールドワーク研究という課題を手がかりにこの目標達成に向けた研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は以下の目標の達成を目指す。 (1)emerging technologyについての考察と国際的な検討 当初は、平成29年度に理論的考察で得られた哲学的視点と予備的考察で得られた知見をもとに、人工知能、ビックデータ技術などのemerging technologyのあるべき姿について、社会的提言の素案を作成する予定であったが、上記の通り、領域が多岐にわたり、また問題も複雑であるため、さらに理論的に検討を進めることとする。具体的には、人工知能の進歩によって専門家の仕事のあり方が変わるのかどうかを考察しながら、人工知能と専門家の知識について考察をして、国際学会で発表する予定である。また、同時に、自動運転技術などについて、フィールド研究を進めることにしたい。なお、年度末に国際シンポジウムを開催して研究成果を検討する予定であるが、研究の進展や予算残額などを見ながら実施方法について考えることにしたい。 (2)技術哲学に関連した教育の調査 平成29年度は、技術の教養教育を構築するため、現行の技術哲学に関連した教育について、調査する。具体的には、①オランダの三つの工科大学(デルフト工科大学、アイントホーフェン工科大学、トゥワンテ大学)が中心となって運営する4TU.Centre for Ethics and Technologyの動向、ならびにそれぞれの大学で実践されている教育、②VDI(ドイツ技術者協会)の動向、およびドレスデン工科大学やダルムシュタット工科大学などドイツの工科大学で実践されている教育、③中国や韓国の教育について調査する。それぞれ、大学が公開している情報の調査に加えて、国際学会や国際シンポジウムの場を利用して、教職員や学生へのインタビュー調査を実施する。 また、技術の教養教育に資する技術哲学に関する書籍の出版を最終年度に目指し、その内容についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度にバルセロナで開催予定の「Society for Social Studies of Science」(4S)で発表し、今後の理論的考察の方向性を確認する予定であったが、本科研費の内容により近い「The Forum on Philosophy, Engineering & Technology」 (fPET)の研究大会(2年に一度開催)が当該年度にドイツで開催されるという情報を得たことにより、予定を変更した。また、当初は複数メンバーが参加する予定であったが、本研究課題が採択された直後の5月の開催であったため、代表者である金光のみが参加することになった。そのため、当初予定していた旅費の支出に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度末に国際シンポジウムの開催を予定しており、未使用の部分については海外から研究者を招聘するために使用する予定である。
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Research Products
(12 results)