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2017 Fiscal Year Research-status Report

グローバル化時代のイスラム言説生成過程に関する研究:ファトゥワーを中心に

Research Project

Project/Area Number 16K02178
Research InstitutionTokyo University of Foreign Studies

Principal Investigator

八木 久美子  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90251561)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywordsイスラム / イスラーム / 言説 / 結婚 / 婚姻 / ファトゥワー / ファトワー / 音楽
Outline of Annual Research Achievements

本研究はイスラム復興という現象を、一般信徒の日常生活の細部に起きている現象として捉え、人々の日々の実践を決定するようなイスラム理解はいかに形成されるのか、を明らかにしようとするものである。28年度の成果として、婚姻関係に注目することが有効であることが判明していたことを受け、29年度はそのなかでも昨今のアラブ世界で話題になっている「イスラム的/式」ウェディングに関するファトゥワーにフォーカスして分析を行なった。
イスラム法に関していうと、婚姻契約の締結についてはいくつもの要件があるものの、祝宴については特定の規定はない。つまり「イスラム的/式」ウェディングという概念自体が新奇なものであり、存在しうるとしてもそれは新しく創造されるものでしかない。そのため、なにを基準として「イスラム的/式」ウェディングと認識されるかは、まさに現代社会に生きるイスラム教徒のいだくイスラム(教徒)イメージと重なるのである。
この分析のなかで明らかになったのは、「イスラム的/式」ウェディングをめぐる議論のなかでもっとも多く関心を集めていたのは音楽の是非だという点である。この事実の重要性は、次のような点を考慮することで確認できる。従来は地域を問わず、親族、友人のみならず、近隣の人々をも広く招き、歌や音楽にあわせてダンスが披露されるといった華やかな祝宴が当然とされてきたこと、ただその一方で、イスラム法学の世界では、中世以来ほぼ一貫して音楽に対する否定的な見方が強かったこと、である。後者について説明を加えるならば、音楽は人々を陶酔させ、自己の制御を超えた状態にするというのがその理由である。
一般信徒がイスラム法学の議論にアクセスする機会が増えるなかで、それを自らの実践のなかに反映させようとする動きが強くなっていること、さらには伝統的なものとイスラムを結びつける傾向が弱くなっていることが確認された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では、人々の実践を中心に据え、それについて出されたファトゥワーを分析する予定であった。しかしながら、ファトゥワーの周辺に広がる言説、つまりイスラム法学者の回答だけではなく、相談を寄せる側の言葉づかい、さらには出されたファトゥワーについて人々が交わす議論をも丁寧に追うなかで、(英語にすると、Islam, Muslim, Islamic, pious, religiousとなる、)いくつかのキーワードを人々が使い分けていること、さらにその使い方には歴史的に変化があることに気づいた。これについてはまだ分析を始めたばかりであるが、一般のイスラム教徒のイスラム観を見るうえできわめて重要な材料となりうる。

Strategy for Future Research Activity

上記の観点を軸に、平成30年度は「イスラーミー」という概念がどのように変容しているかを見ていく。この語は日本語にすると「イスラム的」、英語では「Islamic」となるが、イスラムの聖典であるコーランには一度も出現せず、イスラム法学の用語ですらない。(イスラム法学では「シャルイー」という語が「(イスラム法上)合法的」という意味で使われるが、それにはイスラム固有のなにかであるという含意はない。)しかしながら、信頼のおけるアラビア語コーパスによれば、この語の頻度は過去30年非常に高くなっており、「イスラーム」の語よりも多く使われるようになっている。この傾向は今も変わっていないことを受け、何がこの事態を起こしているか、背後で動いている力について分析を行なう。
とくに今年度注目したいのは、消費の場で展開される論理である。つまり自らの結婚を「イスラム的」な性格のものにしたいと願う消費者と、それに応えて顧客を増やそうとするウェディング業界、さらにはそれらに意見するイスラム法学者という三者の言説を比較することで、消費という人々の日常的実践のなかから「イスラム」の具体的なイメージが作られ続けていく過程を解明していきたい。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018 2017

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 「音楽の魅力あるいは誘惑:婚礼をめぐるアラブ・ムスリムの語りを中心に」2018

    • Author(s)
      八木久美子
    • Journal Title

      『総合文化研究』

      Volume: 21 Pages: 6-19

    • DOI

      10.15026/91218

    • Open Access
  • [Presentation] 「結婚に関するアラビア語言説から見る「イスラム」の多様な含意」2017

    • Author(s)
      八木久美子
    • Organizer
      日本宗教学会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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