2019 Fiscal Year Annual Research Report
Islamic discourse produced in the age of globalization
Project/Area Number |
16K02178
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
八木 久美子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90251561)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イスラム / イスラーム / 言説 / ムスリム / イスラム復興 / 婚姻 / 国家 / 結婚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1980年頃から顕著になったイスラム復興を、政治的な領域に限定されない、人々の日常生活の細部に起きている現象として捉え、その根底にあるイスラム理解が形成される過程を明らかにしようとするものである。
前年度までに明らかになっていたのは次のような点である。1)多岐にわたるイスラムに関する言説のなかで、結婚に関するものは、それが一人の人間の人生にとって極めて重要な問題であると同時に、社会のありようを決定する力を持つという点で、本研究にもっとも適していると考えらえる。2)昨今のアラブ世界では「イスラム的/式」ウェディングと呼ばれる新奇な結婚式が話題になっており、それが「イスラム的/式」と認識される基準は、ウラマーによる伝統的なイスラム解釈ではなく、現代社会に生きるイスラム教徒のいだくイスラム(教徒)イメージである。3)コーランには全く出現せず、イスラム法の用語ですらない、「イスラム的/式(islami)」というアラビア語が多用されるようになったのは、イスラム復興が社会全体に浸透していった1990年代であり、この語の多用はキリスト教など他の宗教、文化との差別化を意識し、イスラム性の可視化を求める意識が生み出した現象と考えられる。
これを受け最終年度は、こうした人々の意識の形成に国家権力の動きがどの程度影響しているかについて調査を行なった。近代のエジプトに焦点を合わせ、婚姻制度に介入しようとする国家の試みに対して人々がどのような反応示してきたかを分析した。結婚適齢の制定、結婚の届け出制度の導入などの国家による試みは、イスラムに根のないものとして退けられる一方で、その土地固有の慣習はその権威が問われることなくイスラム的な実践として結婚に不可欠なものとして重んじられるという点が確認できた。この点は、人々の自律的なイスラム理解を示すものとして次の研究につながる大きな成果であった。
|
Research Products
(2 results)