2016 Fiscal Year Research-status Report
黄河流域の村廟と祭祀芸能活動「社火」からみた民間信仰の地域的多様性と社会的結合力
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16K02179
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| Research Institution | Nagoya University |
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Principal Investigator |
櫻井 龍彦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60170643)
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2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 宗教学 / 文化人類学 / 祭祀組織 / 民間信仰 / 山西省 / 廟会 / 儺戯 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
黄河流域の村廟と祭祀組織とその実践活動に焦点をあて、その地域的多様性と民間信仰が地縁社会ではたす社会的結合のあり方を考察するため、今年度は晋西と晋西南の地域を中心に調査した。
晋西では磧口鎮黒龍廟、寨則山観音廟・関帝廟・三官廟・五道廟・河神廟を調査し、とくに黒龍廟では新暦8月3日に廟会がおこなわれたので、それに合わせて現地調査をした。
磧口鎮は歴史的に物資集散の船着き場として知られ、その古鎮の性格を活用した観光化が進んでいて、廟会も信仰的な要素は後退している。しかし戯台では三日間にわたり水神への奉納行事として地方劇が演じられていた。廟の管理人、晋陽から来ていた劇団員などへの聞き取りと清代・乾隆年間、道光年間建立の碑文の収集をし、地域の社会的結合に関する廟会の役割について情報を得た。
晋西南では洪洞県唐堯故園、万安鎮歴山舜廟、臨汾市魏村牛王廟、曲沃県任庄村などを調査した。歴山舜廟では古老から「接姑姑迎娘娘」行事の聞き取りが有益であった。この行事は神話上の人物である堯の娘であり舜の妻となる二人の娘の神像を村々で巡幸するものであり、旧暦3月3日に盛大に行われる。地域的結合に民間信仰の祭祀圏が重なる事例として今後も継続調査の必要がある。
曲沃県任庄では扇鼓神譜抄本の保存者の家を訪問し、行事の内容と抄本コピーを入手した。この扇鼓儺祭祀活動の主神は后土娘娘である。娘娘は全村の災難を駆除し、安康をもたらす役目をもつ。したがって今後は后土も重点的に研究する必要があるという認識にいたった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画は
１，前半年は山西省の社火と廟会について文献を収集し、後半年に文献を通した研究をはじめる。とくに手抄本の『扇鼓神譜』に関する報告書を入手し解読をはじめる。
２，本格調査に入る前の予備段階として、具体的に市、県、鎮、村内のどこでいつ廟会が行われているかを調べ、実施計画を立てる。今年度は8月に磧口鎮で黒龍廟会の調査をするほか、万栄県と曲沃県のいずれかで可能な調査地をさがす。
という2つの計画を立てた。１については、資料を入手し解読をすすめている。２については磧口鎮で黒龍廟会の調査が実施でき、曲沃県以外に洪洞県、万安鎮、臨汾市魏村などで調査が実施できた。
本研究の目的達成には廟会の日に合わせて現地調査を実施しなければならないが、廟会は日本の大学の学年スケジュールで渡航可能な日程で行われるわけではないので、廟会の開催に合わせて調査するのは難しい。したがって開催日での参与観察はできないが、平常の日に訪問しての聞き取り調査と資料収集が中心になる。今年度は主要な碑文を約20基の石碑から集め、扇鼓神譜の原文も手に入れたので、その解読と分析を進めた。来年度も引き続き作業をおこなう。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は晋西と晋西南の地域を中心に調査したので、平成29年度は範囲を晋南に広げ、万栄県の后土祠、Lucheng市の城隍廟、碧霞宮、玉皇廟などを調べる。后土祠では降雨への祈願と前年度に調査をした黒龍廟の龍王信仰とを関連させ、祈雨習俗がはたす村落の社会的結合力を分析する。昨年度収集した扇鼓資料のなかの儺戯「坐后土」は、后土娘娘（土地神）の誕生日を祝うもので、巫覡の古俗をよく伝えているので、女神信仰、祈雨、農耕の観点から引き続き考察をおこなう。
Lucheng市の各廟では農村の祭祀組織「社」のネットワークと廟会での運営方式をみる。また南舎村では万暦2年（1574）の『迎神賽社礼節伝簿四十曲宮調』抄本が1985年に発見され、1989年には清・道光年間の『迎神賽社祭祀分範及供盞曲目』抄本が発見されているので、入手できるよう努力したい。
また当初の計画になかったものとして、長治県の楽戸制度についても調べたい。楽戸は北魏の時代までさかのぼれる楽籍の階級民で民間の祭祀儀礼に関わる。その子孫の現状と分布を把握し、民間祭祀にいまどのように関わっているか、実態調査が可能であれば行いたい。
現地での調査地への連絡と実施については、引き続き山西大学の段友文教授などから協力をえる。
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| Causes of Carryover |
旧暦3月3日（新暦3月30日）に予定していた廟会調査がその前後を入れると、日程が年度をまたがるため費用支出が難しく断念したことと、聞き取り資料の文字起こし作業が未完であったため予定していた謝金が未払いになっているため。両者を合わせた分の金額が残った。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度支払うべき謝金を今年度で支払い、現地での調査計画を今年度は2回にする。
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