2021 Fiscal Year Research-status Report
生命倫理問題に対する宗教的アプローチと障害学的アプローチに関する比較研究
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16K02183
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
安藤 泰至 鳥取大学, 医学部, 准教授 (70283992)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生命倫理 / 障害 / 宗教 / スピリチュアリティ / 生命操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
島薗進との共編にて著書『見捨てられる〈いのち〉を考える―京都ALS嘱託殺人と人工呼吸器トリアージから―』(晶文社)を刊行したことが最大の成果である。同じ宗教学者である島薗氏、および障害当事者・支援者としてさまざなま活動を行っている三人の共著者(川口有美子氏・大谷いづみ氏・児玉真美氏)との緊密な共同作業による同書には、生命倫理問題についての本科研研究のエッセンスが集約されており、宗教学・倫理学・生命倫理・障害学や障害者運動など多様な研究者から大きな注目を集め、さまざまな新しい議論の場を開くことに貢献した。 また、日本スピリチュアルケア学会では「安楽死とスピリチュアルケア」について研究発表し、日本哲学会のワークショップ「日本におけるゲノム編集技術を使う生殖の正当性―科学技術イノベーションと人間の尊厳―」では「生命操作と「当事者」性―人の生殖への技術的介入はどこまで許されるのか?―」、日本生命倫理学会のワークショップ「〈20世紀生命倫理学の地平〉を今世紀にどう生かすか?―自己決定か公共選択かをめぐって!!」では「「生命操作におけるデザインと排除―「安楽死」はなぜ生命操作の一部なのか?―」という提題を行うなど、さまざまな学会において、本研究の核となるテーマについて、発表、提題、講演などを行った。 また昨年度に引き続き、安楽死・尊厳死については数多くの講演をはじめ、メディアへのインタビューにも応じ、仏教関係者を中心とする宗教者や、さまざまな障害当事者の人たちとの活発な議論を行えたことは、本研究にとって意義の大きなものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引き続きコロナ禍のため、予定していたインタビューを行うことができず(年度末にオンラインで行うことを考えていたが、インタビュー対象者の病気により延期せざるを得なくなった)、さらに1年間の研究期間延長を申請し、認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に出版することができなかった単著『生命操作時代の死生学』をKADOKAWAより刊行する。 昨年度できなかったインタビューについては、インタビュー対象者の健康回復を待って実施する予定だが、それが不可能になった場合は、宗教と医療、障害、終末期ケアに関わる活動を行っている別の方にインタビューを依頼して実施する(候補者は2人に絞っている)。 また、安楽死合法化から20年を経たベルギーの医療者が中心になって書かれた安楽死批判本(本書でいう宗教的観点・障害学的観点にとっても重要)を現在、児玉真美氏(重症障害児の親の立場から生命倫理に多くの発言を行っているライター)および笹月桃子氏(小児科医で小児緩和ケアが専門)とともに翻訳中であり、秋には東京大学出版会から刊行を予定している。同書の刊行に合わせて、日本医学哲学・倫理学会および日本生命倫理学会でのコロキウムとシンポジウムを企画しており、新たな議論の場を切り開くことが期待できる。 また、一昨年度に行った糸賀一雄についての研究発表を論文化したものを『宗教哲学研究』ないし『宗教研究』に投稿するとともに、これまでのインタビューや講演、発表物などを報告書にまとめたい。
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Causes of Carryover |
引き続きコロナ禍のため、予定していたインタビュー調査のための出張もできず、学会、研究会もすべてオンライン開催となったため出張がなく、旅費として予定していた分のほぼ全額が使用できなかったため。 本年度は対面形式で行う予定の学会・研究会もあり、旅費支出はかなりあると予想できる。余った分はさらに研究を深めるための書籍の購入に使用したい。
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Research Products
(7 results)