2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02188
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中野 泰治 同志社大学, 神学部, 准教授 (80631895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クエーカー信仰 / 教会論 / 社会形成 / 正統派神学 / 規律の重視 / 心性の変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究計画に従い、クエーカーの合議形式について調査するために英国に向かい、合議の司会者(書記)を養成するプログラムに参加すると同時に、1980年代に論争となったLGBTに関わる議事録の収集を行った。それと同時に、平成28年度から引き続き行っていたクエーカー信仰における組織論のあり方に関して、特に17世紀半ばから18世紀初頭まで指導者の地位にあったGeorge Whitehead(1637-1724)を中心にして、彼の思想と役割について調べた。 研究成果:クエーカーの合議形式については、欧米で用いられている熟議・討議民主主義との比較研究を行ったが、まだ結論が出せるほどの十分な資料が集まっていないため、平成30年度に実施予定の米国での資料収集の後に、成果を発表したい。Whiteheadの思想については、(1)彼の思想を名誉革命までの「前期思想」と名誉革命後の「後期思想」に分けて研究し、名誉革命後の政治・思想状況から後期思想が当時のイングランドの正統派神学に接近したものであることを明らかにし、(2)静寂主義の先駆者としての従来からの評価に対して疑問を呈し、(3)Whiteheadの思想と彼の役割、および彼の活躍した時期に当たる「第二期クエーカー思想」に対する新しい研究の方向性について提示した。 本成果の重要性:(1)重要な人物にもかかわらず、これまで十分に研究されてこなかったWhiteheadの思想をピューリタン的色彩が濃く、規律を重視する正統派神学であることを十分な資料読解から明らかにした点、(2)Whiteheadを18世紀の静寂主義を招いた人物とする先行研究群の矛盾を明らかにした上で、組織化がさらに進展した「第二期クエーカー思想」の特徴を明らかにするために、指導者層だけではなく、等閑視されていた平信徒の心性の変化にも注目した点で、重要な研究になったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クエーカーの合議形式の特徴について明らかにするために、平成29年度に英国における調査旅行を実施し、欧米で近年用いられている熟議・討議民主主義などとの比較研究、および理論的分析を行ったが、結論を出すまでの資料の量が十分ではないと判断したため、平成30年度に実施予定である米国における資料収集に基づき、引き続き研究を行う。本研究計画で初年度に行う予定であった17世紀クエーカーの思想研究(特に彼らの組織論・社会形成論)については、平成29年度の研究をもってある程度進展したと判断し、一旦終了する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、(1)米国のクエーカー系大学の図書館やクエーカーの研修機関を訪れ、17世紀から現代に至るまでの議事録の選択的な収集と分析を行い、クエーカーがどのように合意形成を行ってきたかについて政治的・社会学的観点から明らかにするための研究を行う。(2)また、ニューヨークにもあるクエーカー国連事務所(Quaker United Nations Office)に足を運び、DirectorであるAndrew Tomlinsonと対談(インタビュー)を行うことで、世俗のレベルでどのようにしてクエーカー式の合意形成が行われているのかについて調べる。(3)さらに、米国におけるクエーカーの研修機関であるPendle Hillにて、集会を運営する書記(Clerk)になるための訓練を受け、クエーカー式の合議形式の知識や技術、またその根底にある心的態度などについて学ぶ。(4)以上のことから得られた成果を、英語もしくは日本語で発表、論文として出版する。
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Causes of Carryover |
(理由):平成29年度は、論文を英語で執筆する予定であったが、平成30年10月に行われる日本ピューリタニズム学会関西研究会での発表成果を反映したものにするために、執筆時期を延期した。そのため、プルーフリード費用として計上したものを使用しなかった。また、平成29年度中に学会発表する予定であったが、日本ピューリタニズム学会から発表依頼があったため、発表を延期した。そのため、旅費・学会費として計上したものを使用しなかったため、残額が出た。
(使用計画):上記の残高は、平成30年10月に行われる日本ピューリタニズム学会関西研究会での発表成果を英語論文にする際にプルーフリード費用として利用し、また当該学会へ出席するための旅費・学会費として利用する予定であるが、それでも残額がある場合は、本年度は米国へ資料収集へ出かけるため、その資料収集にかかる経費(書籍・コピー代など)として利用したい。
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Research Products
(3 results)