2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02188
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中野 泰治 同志社大学, 神学部, 准教授 (80631895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クエーカー / 合意形成 / 社会形成 / 教会論(組織論) / 数理社会学的分析 / 心性の変化 / 実りへの配慮 / ホーリネス・クエーカリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、6月の交通事故により、予定していた米国での資料調査が実施できなかったため(最終年度である令和元年の夏に延期して行う予定である)、クエーカーの合意形成と社会形成に関する研究は進まなかった。代わりに、令和元年度に行う予定の「クエーカーの合意形成と社会形成理論に関する社会学的分析」のための準備作業として、合意形成学や数理社会学の一般的理論に習熟するとともに、数学的スキルの向上に時間を割いた。また、平成29年度において取り扱った17世紀半ば~18世紀初頭のクエーカー運動の指導者の一人であるジョージ・ホワイトヘッド(George Whitehead, 1636-1723)の神学思想についての研究を拡大し、より豊富な資料の読解作業から議論をより緻密なものにした。 研究成果:(1)クエーカーの合意形成および社会形成に関する数理社会学的な研究については、発表にはまだ十分な段階ではないため、令和元年度に成果をまとめたい。(2)ホワイトヘッドと18世紀クエーカーに関する伝統的な評価を見直す議論については、より豊富な資料を用いることで緻密な議論を展開することで、「静寂主義」という従来の評価から「ホーリネス・クエーカリズム(実りとしての正しい行動に重点をおいたクエーカーのあり方)」という評価への転換を試みた。その成果は論文にまとめて、英国の査読誌に投稿した(審査中)。 本成果の重要性:(1)多数決ではなく、全会一致まで祈りをもって耳を傾け続けるクエーカーの合議形式について、合意形成学の観点からある程度の分析の方向性が見えた。(2)18世紀クエーカーの「静寂主義」という従来からの評価と、彼らの社会事業や奴隷解放における活発な運動のずれに見られる、所謂クエーカー・パラドックスについて、「ホーリネス・クエーカリズム」という視点を導入することで、その矛盾が解決出来た点で重要な研究となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年の6月半ば、自転車で通勤中に、粗暴な運転をしたタクシーを避けるためにブレーキをかけたところ転倒し、右足を3カ所骨折した(1カ所は開放骨折)。一ヶ月半入院し、退院後もしばらく自由に行動できず、現在も通院中の状態である。そのため、当初の計画であった米国のクエーカー系大学や図書館での資料調査ができず、クエーカーの合議形式と社会形成の理論についての研究についてはあまり進むことはなかった。米国での資料調査は、令和元年度の夏に実施して、十分な資料を基に研究を進めたいと考える。初期クエーカー思想における完全論(聖化の完成としての「完全」についての議論)については、本年度で研究の終了としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、(1)米国のクエーカー系大学の図書館やクエーカーの研修機関を訪れ、17世紀から現代に至るまでの議事録の選択的な収集と分析を行い、クエーカーがどのように合意形成を行ってきたのかについて政治学的・社会学的観点から明らかにするための研究を行う。(2)米国にあるクエーカーの研修機関であるPendle Hillにて、集会を運営するClerk(初期)になるための訓練を受け、クエーカー式の合意形式の知識や技術、またその根底にある心的態度などについて学ぶ。(3)以上のことから、得られた成果を、英語もしくは日本語で発表し、論文として出版する。
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Causes of Carryover |
(理由):平成30年度は交通事故に遭ったため、夏に予定していた米国への調査旅行が実施できなかった。そのため、調査旅行費が残った。その費用を、これまで収集した資料のデジタル化のための大型スキャナー購入代に充て、また当該年度における研究結果を英国の査読誌に投稿した際のプルーフリード代金に充てたが、まだ残額が生じた。
(使用計画):この残額と令和元年度の予算を用いて、米国での資料調査代として使用したいと考える。
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