2018 Fiscal Year Research-status Report
戦前期における大本教と道院・紅卍字会と朝鮮新宗教団体との連合運動に関する研究
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16K02189
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐々 充昭 立命館大学, 文学部, 教授 (50411137)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宗教連合運動 / 大本教 / 道院・紅卍字会 / 朝鮮道院 / 普天教 / 檀君教 / 大イ宗教 / 池雲英 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に道院・紅卍字会に関する資料収集を行った。日本国内では、戦前期に行われた大本教と道院・紅卍字会との提携関係に関する資料の他、戦後日本に設立された東京総院(日本紅卍字会)や多摩道院に関する資料収集を行った。韓国においては、国立国会図書館・国立中央図書館・独立記念館(天安市)に所蔵されている関連資料の調査と収集を行った。特に韓国の独立記念館には、戦前期に朝鮮道院に加入していた信徒の遺族が寄贈した資料が保管されており、学芸調査員から聞き取り調査を行った。 収集した資料を通じて、以下の事実が明らかとなった。植民地期朝鮮の京城(ソウル)において1935年に道院が設立され、親日貴族ら百名以上の有力人士たちが入会した。この朝鮮道院は、満洲国の道院(新京道院・安東道院など)と大本人類愛善会の満洲支部・朝鮮支部の支援を受けて設立されたものであった。また、朝鮮道院設立時の会員名簿をみると、侍天教(東学系)や普天教(甑山系)の他、檀君教(大イ宗教から分派した鄭薫模を教主とする教団)や大イ宗教南道本司の信徒たちが多数入会していたことがわかった。 その他、植民地期朝鮮において文人画家として活躍した池雲英に関する研究を行い、その成果を論文として発表した。池雲英は、1910年代から三聖山三幕寺に庵を建てて隠居生活を送り、観世音菩薩を念じる観想修練を長年行った。その過程で、彼は夢の中で聖賢や神霊たちに出会うという体験をし、その内容を記録に残した。本論文では、池雲英が著した『白蓮志異』に記された白頭山天池に関する夢体験を分析し、池雲英と檀君教・大イ宗教との関係について明らかにした。本研究を通じて、檀君教および大イ宗教南道本司に所属した信徒たちが、中国道教の流れをくむ道院・紅卍字会に合流していった理由について、考察の手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も、昨年度に引き続き、研究代表者の体調不良により、海外でのフィールド調査については計画していたすべてを行うことができなかった。研究計画では、韓国において普天教と朝鮮道院に関する調査を行う予定であったが、朝鮮道院に関する資料調査しか実施することができなかった。また、道院・紅卍字会に関しても、海外での調査を行うことができず、日本国内と韓国内でのみ資料収集を行うこととなった。 ただし、資料収集の観点から言うと、大本教と道院・紅卍字会との連合運動の上に、朝鮮側の新宗教団体がどのようにして合流していったのか、その経緯について明らかにしうるだけの資料を収集することができた。 特に今年度の資料調査によって、朝鮮の新宗教団体が大本教と道院・紅卍字会との宗教連合運動に便乗・合流していったのは、日本帝国主義による植民地支配の中で日本側宗教勢力に懐柔された結果であったことが明らかとなった。今後は、中国・台湾において現地調査を行い、特に戦後に公開された道院・世界紅卍字会関連の資料を収集することが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31度は、過年度において行うことができなかった海外でのフィールド調査を行う。具体的には、中国と台湾で資料調査を行う。現在までの調査によると、戦前期における中国の道院・紅卍字会側は、国民党政権や共産主義勢力に対抗して独自の政治的基盤を獲得するために日本側勢力と連繋を図ったものと考えられる。この事実を具体的な資料を掘り起こしながら明らかにする。 また、次年度は研究最終年であるために、今までに収集した資料の整理を行い、「大本教-道院・紅卍字会」の宗教連合体に吸収・包摂されていった朝鮮新宗教教団との提携・連合の在り方が、日本帝国主義と親和性を有するものであった事実を実証的に明らかにする論文を、研究成果として発表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の計画では、韓国において数次の現地調査を行い、普天教と朝鮮道院に関する調査を行う予定であった。しかし、研究代表者の体調不良により、韓国での現地調査は一回で終えたために、普天教に関する調査を中止した。そのために、結果として旅費および現地での協力者に対する謝礼金などに差額が生じた。 (使用計画) 次年度において、当初予定していた現地調査や資料調査を行っていく。平成31年度には中国と台湾で調査を行う。その際、今年度予定していた購入できなかった文献調査のための資料(中国語を含む)を購入する。
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Research Products
(1 results)