2018 Fiscal Year Research-status Report
スペインにおけるブラジリアン・ディアスポラの宗教実践に関する実証研究
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16K02193
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
山田 政信 天理大学, 国際学部, 教授 (70434975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 典史 東洋大学, 社会学部, 教授 (50633517)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民 / 宗教 / カトリック教会 / プロテスタント教会 / ブラジル系移民 / スペイン / イギリス / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
コングレガソン教会の日本における中央教会(安城市)において、日本におけるコングレガソン教会の定着と展開、教会組織、年間行事、聖餐式参加人数、洗礼数について聞き取りを行い、役職者2名(長老と協力者)にインタビュー調査を行った(2018年4月29・30日)。同教会の日本での活動は1994年頃から開始しており、他のブラジル系プロテスタント教会と同時期であることが分かった。熱心な信者の語りには、集会で「海を渡って福音を伝えよ」という「み言葉」を授かり海外(日本あるいはスペイン)に行くことを決心したと語る者が多い。信者が移動を決断するうえで宗教的要因が少なからず働いていることが見て取れるが、これはカトリックやアセンブレイアにはみられない特徴である。 スペインにおける調査(2018年8月23日~9月11日)では、バルセロナ市、サンタコロマ市、ヴィゴ市、オウレンセ市にて、コングレガシオン教会(コングレガソン教会のスペインでの名称)、カトリック教会、アセンブレイア・デ・デウス教会、イスラーム・モスク(サンタコロマ市)の集会および家庭集会を視察した。モスク以外の各教会ではミサや集会に出席している信者へのインタビューおよび質問紙調査を実施した。カトリック教会神父、アセンブレイア・デ・デウス教会牧師と面談し、信者活動の概要について聞き取りを行った。 「継承語としてのポルトガル語シンポジウム」(2019年3月23・24日)に参加し、ブラジリアン・ディアスポラの定着過程における移民第二世代の言語継承の諸問題に関して情報を収集した。 研究分担者(高橋)は、日本の国内外の移民の宗教に関わる研究成果について、国際学会および海外の研究機関における講演(セミナー)において発表したほか、編著者としての学術書の刊行や論集の収録論文のかたちでも公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年6月ごろからバルセロナ近郊に住む神父及びカトリック信者17名に電話でインタビューし、移住の経緯と教会活動状況について聞き取り調査を実施した。現地調査でも同様の聞き取りをカトリック教会で5名、アセンブレイア教会で牧師と信者7名に対して行った。これにより、コングレガシオン教会信者が自らの移動を宿命論的に語る語り様は他の教団と非常に異なる特徴であることが明らかになった。 スペインにおける、これら 3 つの教会の主たるメンバーは非熟練労働者を中心とする人々で定住志向が強い。しかし、カトリック教会には医師や多国籍企業の駐在員などがおり、多様な社会層が看守される。教会がエスニシティと言語を媒介に移民の心の拠り所となり、信者は聖なるものに帰依することによって安心感を得ている点では共通性がある。いずれの教会の信者も電話やインターネットを日常のツールとして用い、越境的なネットワークを当然のように維持しており、そのトランスナショナル性は明らかである。しかし、ブラジルで不動産を購入したり貯蓄や送金をしている人は少なく、ヨーロッパで定住を希望する人の割合が高いことから、教会は越境的なアイデンティティの維持と形成の場を提供しているといえる。 専従の聖職者を置かずに信者を統制するコングレガシオン教会では、スペインで入信した信者の割合がアセンブレイア教会に比べて低く(19.2%)、スペイン到着以前から信頼できる知り合いの信者がいたという割合が高い(26.9%)。また、宗教活動を目的に、ブラジルや他のヨーロッパ諸国を訪問したり、逆に訪問者を受け入れる機会が多い。 研究分担者(高橋)は、イギリスにおけるブラジル系移民の概要とその信仰や宗教実践に関する基礎文献を収集し、その整理・検討を行った。また、イングランド北西部のマンチェスター市内においてブラジル系移民が集うキリスト教会での現地調査も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した諸資料の分析をさらに進めるほか、イギリスを訪問してブラジル系移民が集うキリスト教会での現地調査も実施する。その成果と、日本国内のブラジル系移民をはじめとする移民の宗教の諸事例との比較考察を試みる。 フィールド調査:【コングレガソン教会】これまでのスペインでの調査で、ブラジル→スペイン(ポルトガル)→他のヨーロッパ諸国というブラジル人の移動がみられることがわかってきた。しかも、コングレガソン信者の場合は、信者であることで得られる信頼を社会関係資本にして未知の国へ比較的容易に移動していることが分かっている。未婚の若者の場合は特にこの特徴が顕著である。最終年度はフィールドをイギリスに移す。ヨーロッパでブラジル人移民が最も多いのがイギリスであり、コングレガソン教会も活動を行っている。しかし、これまでの電話による事前調査では、スペインに比べると同教団はそれほど活発ではない印象がある。現地調査を行うことで正確な実態を把握し、スペインや日本の同教団の活動を照射させるための資料としたい。 【カトリック教会】カトリック教会の場合、イギリスではブラジル人のための教区教会が生まれているという情報がある。現地で視察を行い、実態を把握する。 文献調査:スペインとイギリスにおけるブラジル人移民に関する先行研究を精査する。
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Causes of Carryover |
平成30年度支出に不足金が生じたため前倒し支払請求を行ったが、前倒し分をすべて消化しなかったために次年度使用額が生じた。この未消化分は少額であり、次年度はこれを含めて予定通りに予算を執行することに問題はないと考える。
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Remarks |
高橋典史「欧州における日本文化の発信と異文化交流を担う宗教関連組織に関する調査報告」『「日本文化の背景となる仏教文化の研究」平成29(2017)~平成30(2018)年度研究報告書』(東洋大学東洋学研究所 東洋大学井上円了記念研究助成・大型研究特別支援助成 研究代表者:相楽勉),2019年2月,85-99頁.
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Research Products
(11 results)
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[Book] Globalizing Asian Religions: Management and Marketing2019
Author(s)
Wendy Smith (編集), Hirochika Nakamaki (編集), Tamasin Ramsay(編集), Lauella Matsunaga (編集), Peter Clarke, Yoshihide Sakurai, Susumu Shimazono, Hiroshi Iwai, Benjamin Penny, Shamsul A. B., Hidetake Yano, Barbara Watson Andaya, Tomoe Moriya, Masanobu Yamada, Ronan Pereira, Hedeaki Matsuoka, Nobutada Inoue
Total Pages
380
Publisher
Amsterdam Univ Pr
ISBN
978-9462981447
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[Book] Encyclopedia of Latin American Religions2019
Author(s)
Henri Gooren (編集), Usarski, F., Shoji, R., Rodriguez Plasencia, G., May May, E., McKenzie, G., Apud Pelaez, I., Clara, M., Ruiz Santos, R., Valdenegro, A., Cordova Quero, H.,da Costa, M., Tomita, A., Valdrigue, A.,Saizar, M., Guerriero, S., Loundo, D., Younger, P., Strange, S., Masanobu Yamada
Total Pages
1600
Publisher
Springer
ISBN
978-3319270777
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