2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02194
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
津田 謙治 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (00532079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教父学 / 場所論 / 宗教哲学 / 古代キリスト教思想 / 質料論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、事前に提出した研究計画に沿うかたちで以下の四点に関して研究を進めた。 1「研究資料の収集」今年度は、本務校から在外研究にてドイツで研究を行う機会を与えられたため、テュービンゲン大学にて豊富な資料を閲覧することが可能となり、今まで内容を確認してからでないと購入できなかった資料や、ドイツ国内でしか購入できなかった資料などを入手することができた。また、20世紀前半から半ばに出版された後、絶版になった書籍など、研究テーマに沿った多くの資料を調査し、収集した。 2「前年度の研究・学会発表の公表」前年度に使徒教父の資料をもとに本研究テーマである「場所」論について考察し、学会発表を行った研究を加筆・修正し、「万物の包括者 ― 使徒教父の文書から」とする題目で所属大学の紀要『西南学院大学国際文化論集』に投稿・公表した。また、前年度から進めていた研究を、「初期キリスト教教父思想におけるオイコノミア概念 ― 否定神学、悪の問題を手掛かりとして」という題目で、日本宗教学会の発行する『宗教研究』に投稿し、公表した。 3「研究・学会発表」当初の実施計画に基づき、主として2、3世紀頃のキリスト教およびその周辺のテクストを分析し、そこから得られた研究結果を「『ヘルメス文書』に見られる「場所」概念の考察」として日本宗教学会学術大会(東京大学)において、また「神の遍在と非場所性 ― アレクサンドリアのクレメンスの議論を中心として」として日本基督教学会(ルーテル学院大学)において発表した。 4「研究資料の分析と翻訳」前年度から本年度にかけて収集した資料を関連文献と照らし合わせながら分析し、次年度の学会発表(京都大学基督教学会学術大会など二箇所以上を予定している)および公表の準備を行った。また、本研究テーマに関連する230頁ほどの書籍(ドイツ語)を翻訳して出版社に引き渡し、次年度中の出版を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画においては、護教家教父と反異端教父における「場所」概念に関わる議論の分析を目的としていたが、すでに大枠の議論の分析は行うことができたため、さらに進んで同時代およびその後代の東方教父とその周辺における本研究テーマの議論を分析することができた。ただし、今年度扱った資料の『ヘルメス文書』は研究計画時には考察対象となっていなかったものであるが、分析を進めた結果、本研究テーマの考察に必要な資料であった。また同様に、古代教父思想におけるオイコノミア概念の分析も当初の計画にはなかったが、「場所」において超越する神がどのように世界に内在し、関わるのかについての重要な議論を提示するため、こちらについても考察を行い、結果的には包括的な議論の展開につながることになったと言える。他方で、グノーシス思想などのテクストや先行研究を踏まえた分析が十分に行えなかったため、今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の予定では4世紀以降の議論の分析になっていたが、3世紀における本研究テーマに関わる資料が、研究を進めていく中で新たに幾つか見つかったため、そちらの分析を行うこととする。前年度より引き続きキリスト教思想周辺の諸哲学における「場所」概念を分析し、その成果を学会発表などを通じて公表する。
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Causes of Carryover |
(理由)洋書購入などを主として予算を使用していたが、為替の変動などによって書籍の金額を予想することが困難であったため、その結果、次年度使用額が生じた。
(使用計画)図書等の購入費用などを中心として使用することを計画している。
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