2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02194
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
津田 謙治 西南学院大学, 国際文化学部, 教授 (00532079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教父学 / 場所論 / 宗教哲学 / 古代キリスト教思想 / 質料論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、事前に提出した研究計画に沿うかたちで、以下の四点に関して研究を進めた。 1、「研究資料の収集」・・・ 今年度は、前年度にドイツで収集した資料を引き続き整理しつつ、夏の学会発表で用いる資料を新たに購入した。具体的には、前年度にアレクサンドリアのクレメンスの資料を中心に収集を行ったが、今年度はこの思想家の少し後の時代に活躍したオリゲネスの資料が新たに公刊されたことを踏まえ、原典だけでなく最新の研究文献などをできる限り収集した。 2、「前年度の研究・学会発表の公表」・・・ 前年度は、古代エジプトの『ヘルメス文書』及びアレクサンドリアのクレメンスの資料をもとに本研究テーマである「場所」論について考察し、学会発表を行った。前者については加筆修正中であるが、後者については査読を通過し、「神の遍在と非場所性 ― アレクサンドリアのクレメンスの議論を中心として」とする題目で『日本の神学』第57号で公表することが可能となった。他方で、『神についていかに語りうるか』(W.シュスラー編)に収録された新プラトン主義及び古代教父に関するドイツ語の論考を翻訳し、公刊した。 3、「研究・学会発表」・・・ 当初の実施計画においてはテルトゥリアヌスとフィロポノスの分析を行う予定であったが、前年度の研究主題であるクレメンスに関連性の強いオリゲネスの研究分析が早急に求められることが判明したため、「オリゲネスにおける神的場所概念の考察 ―『祈祷』における議論を主軸として」という題目で、夏に京都大学基督教学会にて発表を行った。 4、「研究資料の分析と翻訳」・・・ 前年度に引き続き、本年度にかけて収集した資料を関連文献と照らし合わせながら分析し、次年度の学会発表(秋の国際シンポジウムにおける登壇などを予定している)および公表(次年度に提出し、さらにその翌年度に分担執筆として刊行予定の論考など)の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画においては、3世紀および6世紀の思想家における「場所」概念の分析が目的とされていたが、前者に関しては改めて資料を再分析した結果、既に2012年度および2014年度に公刊した論文とは異なる論拠は見出されなかったため、前年度の研究で新たに必要となったオリゲネスの分析に今年度は注力することが出来た。後者に関しては、新たに入手した資料分析の結果、6世紀に分析の目を向ける前に、4世紀前後にも同様の議論があったことが判明したため、そちらを分析することで概念史全体の連続性や包括性がより強固になると考えられる。他方で、前年度に触れられなかったグノーシス思想などのテクストや先行研究を踏まえた分析は、行うことが出来たが十分とは言えないため、引き続き今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の予定では研究の成果をまとめて公刊の準備を予定していたが、研究を進めた結果、申請段階では不明瞭であった幾つかの思想家たちの「場所」概念の議論の存在が明らかになったため、まとめる前に引き続きそれらの分析を行うこととする。偶然、本研究テーマの関連分野に関する執筆依頼などを連続して受諾することが出来たので、それらの研究を進めると共に、その成果を学会発表などを通じて公表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 前年度に引き続き、洋書購入などを主として予算を使用していたが、為替の変動などによって書籍の金額を予想することが困難であったため、その結果、僅かに次年度使用額が生じた。 (使用計画) 図書等の購入費用などを中心として使用することを計画している。
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