2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02199
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
厳 錫仁 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20387111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 元田永孚 / 儒学思想 / 実学 / 心論 / 日本思想 / 帝王学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主として元田永孚の思想について研究を進めながら、熊沢蕃山と横井小楠の基礎資料の分析を並行した。当初の計画では、元田の研究は最終年度に行う予定であったが、本研究の全体の構図からして中心となる分野であるため、優先的に押さえておく必要があり、資料の精読・分析に着手し、それによる一部成果を研究論文として発表した。 元田永孚の研究では、明治天皇への側近奉仕(帝王学の教授)と明治期の重要な教育政策の基礎を作るといった、彼の後半期の業績を生み出す基盤となる彼の儒学思想を中心にして、彼の思想営為を捉えようと取り組んだ。それによって、①元田の儒学思想形成、②帝王学、③日本近代儒学への影響、という三つの研究方向を想定し、①は「元田永孚の思想形成と展開」(『倫理研究所紀要』27号、2018年2月)として発表した。ここで明らかにしたのは、元田の学問形成の過程は、江戸思想史において変容してしまった儒学の本来の姿を、蕃山もそこに含まれる朱子学によって追求していったものであり、変容した儒学というのは、心工夫-修己道徳-治人経綸という段階を踏んだ儒学本来の政治的理想が蒸発してしまったものをいい、元田の儒学思想=実学はそれを取り戻し、その実現を目指したものであったとまとめられる。②のテーマは、現在「元田永孚の帝王学と時代的意義」として執筆中である。 2017年5月には中国安徽大学主催の国際学術シンポジウムに参加し、「儒学における心(儒学中的心)」を報告した。これは2016年度に遂行した研究成果の一部を中国で発表したものである。2018年1月には韓国忠北大学で開かれたシンポジウムに研究分担者(佐藤貢悦)とともに参加し、日本思想における習合についての報告(研究分担者)を行い、韓国・中国・アメリカの研究者たちと東アジアの思想史について意見を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は幕末明治期の思想史を江戸思想史、また朝鮮思想史(李退渓思想)の脈略のなかで捉えよとするものであり、扱うべき資料が膨大にのぼっており、資料分析に思ったより時間がかかり、具体的な成果発表がすこし遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き、熊沢蕃山をはじめとする江戸思想史の全般的な傾向について調査する。 2)大塚退野、平野深淵などの熊本実学派の源流となる学者の思想を李退渓との比較において研究する。 3)元田永孚の儒教思想に関する二つのテーマ(帝王学、日本近代儒学への影響)の研究を行う。 4)横井小楠の儒学思想について儒学思想史や江戸思想史のなかでの位置づけ、元田との連続・不連続の観点で研究する。
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Causes of Carryover |
図書購入の際に計算錯誤により未採用額が生じた。これについては資料購入や論文投稿時の費用に充てたい。
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