2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Historical Study of Kumamoto Jitsugaku School and Yi Toegye Studies
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16K02199
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
厳 錫仁 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20387111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熊本実学派 / 李退渓 / 横井小楠 / 元田永孚 / 心学 / 皇道主義的儒教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熊本実学派を形成する大塚退野、横井小楠、元田永孚などの思想営為を対象に、朝鮮の李退渓学との比較思想史的考察を通して、その展開様相を考察したものである。研究代表者と分担者は研究期間中に、国内外の学術会議において研究発表6回、国内外の学術誌に6篇の論文を発表し、熊本学派と退渓学との思想内的関係や元田永孚の思想史的位置づけを解明する研究成果を得ることができた。 最終年度に当たっては、横井小楠の死後、熊本実学派の理念の担い手となった元田永孚の儒教思想の特徴と意義を考察する研究を行った。その研究成果は、2020年10月開催の「筑波大学哲学・思想学会第41回学術大会」において発表し、2021年4月に「元田永孚の儒教思想の座標―儒教と皇道主義の間―」としてまとめてF1000Researchに掲載した。儒教思想を活動の基盤としながらも、天皇中心の皇道主義をそこに持ち込んだ元田の思想営為を、熊沢蕃山との比較、さらに東アジア儒学史に照らしてみることで、元田は堯舜の王道政治を明治前期において本気で実現しようと臨んだ時代錯誤的な儒学者であり、また時勢に手遅れの認識もみられるが、それは彼が誰よりもまじめな儒学者であったことに起因するものであり、彼の主張は後日の露骨な皇道主義的儒教とは違うものがある、という見解を提示した。 ただ、李退渓と熊本実学派との間の思想的な相違点については、両者の資料の分析・考察を終えて、前者が人生哲学的な面、後者が政治哲学的な面に主力するという知見を得ているが、残念ながら最終年度の公刊までには至らなかった。今後、研究発表や論文などを通して公表する予定である。
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Research Products
(3 results)