2018 Fiscal Year Research-status Report
イブン・スィーナー『治癒の書』に関する比較思想史的研究(3)
Project/Area Number |
16K02201
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
小林 春夫 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70242229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英海 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20349228)
山本 芳久 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イスラーム哲学 / イブン・スィーナー / バル・ヘブラエオス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)今年度は、この研究課題の主軸であるイブン・スィーナー『治癒の書』研究会を計6回(2018年5月19日、6月30日、7月28日、9月15日、10月20日、2019年3月30日)、早稲田大学において開催し、アラビア語テクストの精読、古注を含む各種注釈ならびに現代語訳の検討を行い、日本語訳ならびに訳注の作成にあたった。またこの研究会に参加した若手研究者ならびに大学院生に対して、研究上のアドバイスを行った。 (2)個別研究としては、小林春夫(研究代表者)がイブン・スィーナーを中心とするイスラーム哲学関係の文献収集を行い、最新の研究動向の把握に努めた。高橋英海(研究分担者)はシリア語圏の哲学者バル・ヘブラエオスの哲学的・宗教的側面について研究を進め、その成果を国際会議等で発表した。また山本芳久(研究分担者)は、中世ラテン語世界におけるイブン・スィーナーおよびイスラーム哲学全般の受容と影響について多角的な研究を進め、その成果を著書ならびに論文として発表した。 (3)この研究課題の一環として、今年度より新たにThe Cambridge Companion to Arabic Philosophy, ed. Peter Adamson and Richard C. Taylor, Cambridge University Press, 2005の翻訳出版を計画し、研究代表者と研究分担者を中心に、国内の専門家に呼びかけて翻訳作業を進めた。 以上の諸活動を通じて、イブン・スィーナー『治癒の書』を中心とするイスラーム哲学の特徴と影響の比較思想的な解明を進めるとともに、その成果の公開と若手研究者の育成に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、『治癒の書』研究会にてテクストの精読作業は進めたものの、その訳注を公刊できなかった。また小林春夫(研究代表者)は本年度の研究費を計画通りに執行することができず、また予定していた海外調査等の研究活動を行えなかった。以上の2点により、今年度の研究進捗状況を「やや遅れている」とした。ただし、The Cambridge Companion to Arabic Philosophyの翻訳出版計画など新たな研究計画も生まれ、それに向けた作業が進捗していることから「遅れている」とまでは言えないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)次年度も今年度と同様、年に数回のイブン・スィーナー『治癒の書』研究会を開催し、テクストの精読と各種註釈の検討、日本語訳と訳注の作成を行う。またこの研究会を通じて若手研究者ならびに大学院生の研究を支援する。 (2)研究代表者の小林春夫は、今年度に執行しえなかった分も含めて研究費を活用し、関連文献の収集と分析にあたるとともに、海外調査や内外の研究者との交流に努める。研究分担者の高橋英海と山本芳久は、それぞれの専門領域において独自の研究を進め、その成果を積極的に公開する。 (3)The Cambridge Companion to Arabic Philosophyの翻訳出版のための準備を進める。さらにイスラーム哲学に関する共同研究会を企画する。
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Causes of Carryover |
本年度は本務校における業務の関係で、研究関連資料の収集が思うように進まず、また予定していた海外調査の実施が不可能であったため、次年度使用額が発生する状況となった。次年度は本年度に計画し未実施となっていた研究を速やかに実施するとともに、本年度の研究計画をさらに積極的に進めることで助成金の有効利用に努めたい。
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