2017 Fiscal Year Research-status Report
鈴木大拙の『大乗仏教概論』と、ウェーバーの比較宗教社会学へのその影響に関する考察
Project/Area Number |
16K02202
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横田 理博 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (10251703)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 鈴木大拙 / 『大乗仏教概論』 / 『日本的霊性』 / マックス・ウェーバー / 比較宗教社会学 / 『ヒンドゥー教と仏教』 |
Outline of Annual Research Achievements |
鈴木大拙の『日本的霊性』(1944年)について再考し、本書のキーワードのひとつである「霊性」に関して、鈴木が若い頃に『新宗教論』(1896年)などで用いていた「霊性」概念は、心・精神という意味であって、心の奥底からのはたらきという『日本的霊性』での「霊性」の意味内容ではないことを明らかにした。「霊性」概念の形成過程におけるスウェーデンボルグ思想からの影響についても検討した。 「即非の論理」に関しては、鈴木の挙げている「仏説般若波羅蜜、即非般若波羅蜜。是名般若波羅蜜」という言葉は『金剛般若経』には存在しないことを九種類の漢訳すべてについて確認し、鈴木によって「公式化」された命題「AはAだというのは、AはAでない、故に、AはAである」においては『金剛般若経』の「と名づける」が「である」に改変されていることなどに着目した。谷口富士夫・立川武蔵・末木剛博・末木文美士などの「即非の論理」についての所説を参照し検討した。 鈴木大拙についての批判的な論考(ロバート・H・シャーフなど)についても検討した。 マックス・ウェーバーの『宗教社会学論集』の「序言」、および「世界宗教の経済倫理」の「序論」と「中間考察」を再読、再考した。 1904年にアメリカでマックス・ウェーバーはウィリアム・ジェイムズに会ったという指摘があり、一方で、大拙夫人ビアトリスはウィリアム・ジェイムズの講義を聴講しており、鈴木大拙とウィリアム・ジェイムズとの直接あるいは間接の交流が想定できる。ウィリアム・ジェイムズという人物にマックス・ウェーバーと鈴木大拙、両者が接近していたことを踏まえて、ウェーバーとジェイムズとの思想的関係、鈴木とジェイムズとの思想的関係を考察し、間接的ながら、ウェーバーと鈴木との思想的関係への示唆を見出した。ウェーバーと鈴木の両者がともに「芸術・科学会議」に参加していたという興味深い事実にも着目した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年の春に転勤し、新しい環境に移ったため、時間的な制約は増大したが、研究は順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
マックス・ウェーバーと鈴木大拙とが同時期にアメリカにいたということを踏まえ、当時のアメリカの文化的、学問的状況などについても調査してみたい。口頭発表と論文作成に取り組みたい。
|
Causes of Carryover |
時間的余裕がなかったため、資料調査に行けなかった。今年度は実行したい。
|