2018 Fiscal Year Research-status Report
鈴木大拙の『大乗仏教概論』と、ウェーバーの比較宗教社会学へのその影響に関する考察
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16K02202
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横田 理博 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (10251703)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鈴木大拙 / 『大乗仏教概論』 / ショーペンハウアー / マックス・ウェーバー / ウィリアム・ジェイムズ / 『日本的霊性』 / 西田幾多郎 / 「場所的論理と宗教的世界観」 |
Outline of Annual Research Achievements |
鈴木大拙の『大乗仏教概論』の思想形成に影響を及ぼした諸思想について検討した。具体的には、ドイセン、釈宗演、ポール・ケイラス、ウィリアム・ジェイムズの思想、とりわけ、ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』と鈴木の思想との関連について検討した。 昨年度にひきつづき、『日本的霊性』について考察した。『日本的霊性』を鈴木の戦後の「霊性」論(『霊性的日本の建設』と『日本の霊性化』)との対比において捉え返した。また、日本文化への優越感、「無心」の生き方に伴う危険性、殺生・戦争は許されるのか?という三点をめぐって鈴木の『日本的霊性』の立場を検討した。西田幾多郎は鈴木の『日本的霊性』に触発されて晩年「場所的論理と宗教的世界観」を書く。そこには「霊性」、「無分別の分別」、「即非の論理」といった『日本的霊性』のキーワードが頻出し、鈴木からの影響が濃厚である。『日本的霊性』と「場所的論理と宗教的世界観」との思想的関係について検討した。 なお、自己が絶対者と向き合うルートには、自己の外なる客観の方向に超越して絶対者と接し、絶対的命令に従うというタイプ(外在的超越)と、自己の内なる主観の方向に超越して絶対者と接し、絶対者に包まれるというタイプ(内在的超越)との二つがあるという西田幾多郎が「場所的論理と宗教的世界観」で示した類型論には、マックス・ウェーバーの「禁欲/神秘主義」という類型論と重なるところがある。この点にも着目した。 鈴木の思想にはウィリアム・ジェイムズからの影響が濃厚である。一方、ウェーバーもまたジェイムズを意識的に検討していた。ジェイムズへの関心という共有点を媒介として、鈴木とウェーバーとを比較した。 2018年度は、これまでの研究成果を、一論文、日本語による二つの国内学会での口頭発表、英語による二つの国際学会での口頭発表という形で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
秋に大学キャンパスの移転があり、時間や労力を十分に研究にさけなかったが、研究自体は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
鈴木の思想形成において、『大乗起信論』英訳がどのような影響を及ぼしたのかについて検討したい。また、松ケ岡文庫やオープン・コート文庫における資料調査を遂行したい。
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Causes of Carryover |
資料調査に出かける時間的余裕がなかった。次年度は遂行したい。
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