2019 Fiscal Year Research-status Report
鈴木大拙の『大乗仏教概論』と、ウェーバーの比較宗教社会学へのその影響に関する考察
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16K02202
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横田 理博 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (10251703)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鈴木大拙 / 『大乗仏教概論』 / マックス・ウェーバー / アルトゥーア・ショーペンハウアー / ウィリアム・ジェイムズ / 西田幾多郎 / 釈宋演 / 芸術・科学会議(セントルイス) |
Outline of Annual Research Achievements |
1.鈴木大拙の『大乗仏教概論』の内容の把握・思想の分析、2.その思想形成に影響を及ぼした諸要因についての探究(具体的には、ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』からの影響、釈宋演のSermons of a Buddhist Abbot(『閑葛藤』)との類似性など)、3.当時のアメリカでの宗教観と日本仏教の状況の把握(1893年のシカゴ万国宗教会議での議長バローズの見解およびそれに対する平井金三の批判、日本仏教派遣団の一人釈宋演とポール・ケイラスとの出会いなど)、4.マックス・ウェーバーが鈴木の『大乗仏教概論』を読んでどのような見解を示したのか、ウェーバーの宗教観と鈴木の宗教観との方向性の違いと共通性についての解明(両者がともにウィリアム・ジェイムズに関心をもっていたことに着目し、その関心の所在を比較した)、5.ウェーバーと鈴木との接点としてのセントルイスの「芸術・科学会議」(1904年)の趣旨・全体像と各々の報告内容(ウェーバーの「農村共同体の、社会科学の他分野との関係」、鈴木の「仏教はニヒリスティツクか?」)についての考察を遂行した。 6.明治の日本人のショーペンハウアー受容が、井上哲次郎による『大乗起信論』の「現象即実在論」との接合と、ケーベルによるヘーゲル的な理知との接合とを媒介とする特有の形態のものであったことを把握した。 7.西田幾多郎の『善の研究』とショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』とを比較し、どこが共通でどこが対照的なのかを探った。そして、西田幾多郎におけるショーペンハウアーからの影響、鈴木大拙におけるショーペンハウアーからの影響をそれぞれ考察することを通して西田と鈴木の学問の共通点と相違点を探ることも試みた。 8.ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の再考を端緒として、比較宗教社会学の全体像とその問題点について探究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題に背景として関わる釈宋演やポール・ケイラスの思想、また、シカゴ万国宗教会議やセントルイス芸術・科学会議などを知る上で重要な多くの文献をまだ十分には読めておらず、海外での資料調査も実現できていないが、鈴木の『大乗仏教概論』とウェーバーによるその受容という当研究課題の基軸については解明できている。
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Strategy for Future Research Activity |
釈宋演やポール・ケイラスの思想についての理解を深め、また、当時のアメリカでの宗教思想の状況や日本仏教の動向を把握することを通じて、鈴木の『大乗仏教概論』の思想形成の背景を探究したい。そして、『大乗仏教概論』以後の鈴木の思想展開についての考察も進めたい。鈴木の思想とルース・ベネディクトの日本人論やユング思想、フロム思想との関係についても探りたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外での資料調査を延期したため、未使用額が生じたが、今年度(新型コロナウイルスの感染状況などの事情が許せば)海外での資料調査のために使用する計画である。
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