2017 Fiscal Year Research-status Report
<教養教育>に関する思想史研究ーデモクラシー下の市民的資質の観点から
Project/Area Number |
16K02203
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井柳 美紀 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50420055)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治教育 / 教養教育 / シティズンシップ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、デモクラシー下の市民的資質との関わりで教養教育の果たす役割について、特に、J.S.ミル、マシュー・アーノルド、ニューマンなどを主な対象としつつ、19世紀イギリスの思想史的文脈において検討することである。同時に、現代における市民的資質の育成の観点から教養教育の役割について考えていくことをも目的とする。一昨年は、マシュー・アーノルドに関する論文や現代の若者の市民的資質に関する論文を書いたが、昨年は、まず、(1)図書において、共著として、熟議民主主義に関する章を執筆したが、これは本研究において市民的資質の一つとしての熟議に関する資質・問題を扱ったものとして位置づけられるものである。ここでは、熟議民主主義の前提として熟議する文化や環境の育成が必要であることなど、熟議民主主義の可能性や今後の課題について検討を行った。(2)そのほか、19世紀イギリスに関する政治的教養についての研究を、マシュー・アーノルド以外に同時代の教養論争に注目しつつ進めたが成果の公表は次年度となる。既にJ.S.ミルやマシュー・アーノルドについて市民的資質との関連から論文を執筆しているが、現在は、特に、19世紀後半におけるイギリスの教養論争において、民主化や産業化が起きる中で、従来の古典中心の教養教育に対する批判がおきる中で、新たな大学の役割や学校教育の役割などに関しておきた議論に着目しながら検討を行っている。(3)また、市民的資質と教養教育との関連で、シティズンシップ教育や教養教育に関する講演会を自治体向けに複数実施したり、一般市民向けの公開講座を実施するなど、本研究の成果を地域にも還元している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、19世紀イギリス関係の教養教育に関する研究を進めているが、学内業務等により資料収集などに遅れが生じたため。一昨年、マシュー・アーノルドに関する論文を執筆したが、現在研究している、19世紀後半の教養論争については、スペンサー、ニューマン、ハクスリー、J.S.ミル、ニューマンなど多くの思想家たちの間で議論されたこともあり、資料収集や分析に時間を要している。ただし、講演や公開講座のかたちで、地域に対して成果を還元するなどの仕事についてはある程度の成果をあげたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度については、19世紀後半におけるいわゆる教養論争(マシュー・アーノルド、J.S.ミル、ニューマンら)に関する研究を中心に、論文のかたちでの公表を進める。古典と科学、文学と科学、大学教育、義務教育、義務教育に対する国庫補助、宗教教育の役割、政治的中立性などに関わる論点と関連づけ論じていくことになる。なお、準備については予定通り進めている。
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Causes of Carryover |
上記の通り、学内業務の都合により、19世紀イギリス関連の資料の収集のための出張回数が減ったためであり、これについては次年度に出張予定を立てている。
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Research Products
(1 results)