2019 Fiscal Year Research-status Report
<教養教育>に関する思想史研究ーデモクラシー下の市民的資質の観点から
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16K02203
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井柳 美紀 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50420055)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 政治教育 / 教養 / シティズンシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、デモクラシーの進展する時代における市民的資質との関連で教養のもつ役割を示すことであり、特に、J・S・ミル、M・アーノルドなどを対象としつつ、19世紀イギリス政治思想史の文脈を中心に検討してきた。これに関しては、昨年度、19世紀イギリス政治思想におけるデモクラシーと教養に関する業績を、共著として刊行した。その後、古代以来の政治思想史におけるデモクラシーと教養に関する論点と接続するかたちで、デモクラシーと教養の問題を再整理しする方向で、現在その作業を進めている。今年度は、関連する研究として、(1)18世紀におけるフランス知の教養を代表する『百科全書』の執筆者たちに関連するものとして、「ディドロの政治思想」「ルソーの政治思想」について執筆したものが夏に刊行予定で(校了済み)、そのほかヴォルテールなどについても執筆した。デモクラシーと教養に関する研究の一方で、(2)本研究は、現代における市民的資質の育成の観点から教養教育について考えていくことも目的としており、これに関連する業績としては、地方における低投票率に関してのものと、デモクラシーと市民的資質について若者と社会との関連や対話に関することなどもテーマとしたものである。また、市民的資質と教養教育との関連で、シティズンシップ教育や教養教育に関して、自治体や地域向けの講演会などを実施する機会もあり、本研究の成果を地域にも様々なかたちで社会に還元している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内業務の関係で、資料収集等の出張が十分に実施できていないため、若干研究の進展が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度まで期間を延長することとし、今後は、19世紀イギリスの教養論をそれ以前の教養史との関わりで位置づける作業等を行い、政治的教養がデモクラシー論においてもつ意味について思想史的観点および現代的観点からの考察を加える。また、今年度、対話に関するテーマにも取り組んだため、政治的教養における対話の伝統についても活字にしたいと考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外出張が出来なくなり、また学内業務が多忙であったこともあり、次年度使用が生じた。残額は次年度の研究成果発表に関する経費として使用予定である。
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Research Products
(3 results)