2018 Fiscal Year Research-status Report
後期コンディヤックと観念学派-感覚論哲学研究の総合-
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16K02204
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯野 和夫 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30212715)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感覚論 / コンディヤック / 観念学 / 記号 / ボネ / フーコー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、後期コンディヤックにおける感覚論哲学、とりわけ記号論の展開を跡づけ、彼の思想の全体像を明らかにすることであり、さらには、コンディヤックから次世代の観念学派へと至る道筋を見出すことである。また、現代の思想・哲学を常に参照し、感覚論の現代的な意義をも明らかにしようとする。 本研究の三年目である平成30年度は、コンディヤックの後期思想の研究を継続した。この成果の一部は、論文「フーコー『言葉と物』におけるコンディヤック(上)」(名古屋大学大学院人文学研究科『人文学研究論集』第2号、2019年3月発行, pp.101-138)として公表した。この論文では、M. フーコーのコンディヤックへの言及に関連させて、後期の著作『論理学』(1780)に至るまでのコンディヤックの分析理論の歴史的意味を検討した。 一方、パリの College international de philosophie [哲学国際コレージュ] の「百科全書と解釈学」についてのセミナーで口頭発表を行うことが確定したため、準備を進め、2019年2月22日に「Condillac et le probleme hermeneutique [コンディヤックと解釈学の問題]」というタイトルでフランス語による発表を行った。 また、前年度から着手していた、感覚論哲学者ボネの代表著作『心理学試論』(1755)の翻訳と解説執筆の作業を完了し、出版社へ入稿した。組み合わせて出版する別の著者の著作が別途翻訳されており、そちらの原稿の完成を待って近い内に出版される予定である。 なお、平成30年度には上記の口頭発表のためパリを訪れ、併せてフランスの4都市の大学図書館等で、コンディヤックの『人間知識起源論』の内容の版による異同についての、以前より続けている調査を継続した。この調査は今回で区切りをつけ、いずれ報告にまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年度は、前年度より行っているコンディヤックの後期著作『論理学』(1780) の検討を続けたが、検討すべき内容が想定よりふくらみ、他の著作の検討は進まなかった。また、観念学派については、前年度に続けてカバニスの検討を進めたが、やはり検討すべき内容が想定よりふくらみ、デステュットの検討は進まなかった。一方、参照しているM.フーコーの議論の検討は大きく前進した。また、「哲学国際コレージュ」での発表のためにコンディヤックの思想を解釈学との関係において検討したことにより、コンディヤックのライプニッツ論や、コンディヤックの分析理論を取り入れた百科全書の項目などへと研究の幅が広がった。しかし、コンディヤックの後期著作と観念学派の研究が予想したほど進まなかった点で、研究全体の現在までの達成度は予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、検討すべき内容が想定よりふくらみ、コンディヤックの後期著作と観念学派の研究の進捗が予定より遅れた。そのため、研究期間の延長を申請し承認された。研究の最終年度となる平成31年度は、この遅れている二つの研究の推進に万全を期したい。 具体的には、コンディヤックの後期の感覚論関係著作の内、『考える技術』(1775)、『推理する技術』(1775) の検討を推し進める。また、感覚論を継承する観念学派のカバニス、デステュット・ド・トラシの検討を深める。年度の後半には、4年間にわたった本研究のまとめの作業を行う。
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Causes of Carryover |
本補助事業の当初予定の3年間に、私はコンディヤックに関して3本の論文を執筆し、1回の国際学会での発表を行い、さらに観念学派の先駆者の一人ボネの代表的著作の翻訳を出版社に入稿するなど着実に研究を進めた。しかし、検討すべき内容が想定よりふくらみ、コンディヤックの後期著作と観念学派の研究の進捗が遅れたため、その研究に十分な時間を取るため研究期間の延長を申請して承認された。次年度使用額は関連図書の購入に当てる予定である。
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Remarks |
上掲の要約は、2019年2月22日にパリの「哲学国際コレージュ」で行った、「コンディヤックと解釈学の問題」というタイトルのフランス語による口頭発表の要約である。
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